企業年金の現場から

 

平成26(2014)年12月

 

 確定拠出年金の新しい展望

 

 少子高齢化による公的年金の縮小が避けられない状況の中、企業年金拡充の重要性が増しています。特に確定拠出年金への期待は高く、本年もいくつかの制度改正が行われました。その内容について簡単に再確認してみましょう。

 

1.資格喪失年齢の引き上げ(2014年1月1日より)

 従来の企業型DC制度では、加入者が60歳になると資格が喪失となりました。しかし、確定拠出年金法の一部改正により、規約を変更することで65歳まで資格喪失年齢を引き上げることができるようになりました。この変更を行うと、資格喪失年齢到達時または60歳以上資格喪失年齢未満の年齢での退職時に資格を喪失し、老齢給付金の受給権を得ることになります。

 

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平成26(2014)年11月

 

 厚生年金基金の権利義務移転と分割解散

 

 平成26年4月に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(以下改正法といいます)が施行され、ほとんどの厚生年金基金(以下基金といいます)は5年以内に消滅します。基金に加入している従業員の年金期待権はどうなるのでしょうか。

基金が消滅する場合、事業主が従業員の年金期待権を守るいくつかの方法がありますが、ここでは二つの方法を考えてみたいと思います。

 

 最初に、事業主が基金から従業員に係る権利義務を既設又は新設の確定給付企業年金(以下DBといいます)制度に移転してもらう方法です。

 

 

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平成26(2014)年10月

 

   企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の引上げ

 

 

 確定拠出年金法施行令の改正に伴い、企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額が、本年10月1日より引上げられる予定です。平成13年に同制度が導入されて以来、3度目の引上げとなります。なお、個人型については、変更はありません。

 

〈拠出限度額の推移〉

        他の企業年金なし  他の企業年金あり

平成13年10月   月額36,000円     月額18,000円

(制度創設時)

平成16年10月   月額46,000円     月額23,000円

平成22年10月   月額51,000円     月額25,500円

平成26年10月   月額55,000円     月額27,500円 

 

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平成26(2014)年9月

 

 厚年基金解散の後始末

  

 

○解散後、基金事務局が薦める私的年金

 

 厚生年金基金からの代行返上の提案は、十分注意しないと、思わぬ負担を負うおそれがあるということは7月号でお話しましたが、一方解散の場合、基金事務局が基金の加算部分を引き継ぐような形で、新設の企業年金を提案していることが多いようです。こういう提案にどう対処すべきでしょうか。

 概してこういう基金は代行返上したくても財務内容が悪くてできないので、一旦解散した上で、僅かばかりの残余財産を基に、掛金をつぎ足した形で、基金型企業年金とし て生き残ろうとするものです。そこに無理な背伸びの計画となる可能性があります。

 

 

 

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平成26(2014)年8月

 

 厚生年金基金解散へ向けての対応

     

 厚生年金基金の改正法が施行され、解散に向けて方針を固めた基金の話が数多く聞かれるようになりました。こうした状況の中でご質問が多いのは、解散した後に、これに替る代替制度をどうすればよいかということです。 

 なかには解散しても、代替の年金制度は考えていないという企業もありますが、「厚生年金基金の加算部分の掛金水準の一部を振り向けるだけでも、基金から貰える予定の年金を上回る年金給付の設計が可能ですよ」とご説明すると、考えを変えられるケースも多々あります。厚生年金基金を解散するには加入員の3分の2の同意が必要で、これを取るためにも、また、労使間の信頼関係維持のためにも、何らかの代替措置を導入するのが適切でしょう。

 

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平成26(2014)年7月

 

 性急な代行返上同意書の要求

    

○代行返上の説明会と性急な同意書要求  

 4月の改正法の施行をきっかけとして、かなりの数の厚生年金基金が代行返上計画を作成し、各地で説明会を開いています。6月上旬、H基金に加入しているM社のS総務部長は説明会に出かけたところ、一応の説明の上、7月中に代行返上の第1歩である「将来分返上」についての同意書を出してほしいと、その用紙を渡されました。ついこの前まで代行割れになりそうだと騒いでいたH基金が、財政の見通しが明るくなったので、すぐさま代行返上に同意してくださいというのは性急にすぎないでしょうか。

 

 

 

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平成26(2014)年6月

 

 厚生年金基金に関するもう一つの法改正!

  

 本年4月1日から施行された「改正厚生年金保険法」は、厚生年金基金(以下「基金」)の在り方について、基金の解散や代行返上といった抜本的改変を目指すものですが、もう一つ、基金と企業年金連合会(以下「連合会」)のかかわり方についての改正点が注目されます。

 それは、連合会が一元的に行って来た短期間加入(基金により異なります)の「中途脱退者に対する年金の支給義務」業務です。これまで、基本年金(老齢年金給付、以下同じ)の支給義務を基金から連合会へ中途脱退者の申出により移転する事が出来ましたが、今回の法改正・施行によりこの移転が廃止されました。今後、中途脱退者の基本年金は基金が受給待期者として管理し、受給資格取得時に基金から年金給付されます。

 

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平成26(2014)年5月

 

 解散のタイミングについて

 

企業は明確な決断を求められている。

 厚生年金基金の法令が刷新され、各基金としては、今後の歩むべき道を明確に選択しなければならない時期に差し掛かったといえよう。

 ある基金では、2月の代議員会で、事務局が当面の財務改善のために掛金の引き上げを提案したところ、長期展望なき掛金引上げには応じられないという声が圧倒的に多く、掛金引上げ案が否決された事例もある。要するに事務局任せ、幹事金融機関任せでなく企業が自主的に基金の在り方を判断すべき段階に来ているということだ。

   

 

 

 

 

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平成26(2014)年4月

 

 確定拠出年金の最新動向

 

 厚生労働省が発表した平成25年12月末の確定拠出年金(DC)の施行状況を見ると、企業型の実施事業主数は18千社、加入者数465万人となっています。これに個人型の加入者を加えると483万人となり、本格的な普及期を迎えたと思われます。今回はDCの最新動向を概観してみたいと思います。

 

◆大企業で採用すすむ

 2014年3月期に、会計ルールが企業年金の積立不足を負債に計上するよう変更されました。

 

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平成26(2014)年3月

 

 遺族一時金の支給順位について ―厚生年金基金の規約を例に

              

 厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等企業年金には加入者が死亡した場合の遺族への給付制度があり、その扱い方は様々で、種々の問題を孕むことがあります。ここでは、厚生年金基金の規約について、その問題の一面を覗いてみましょう。

 

 厚生年金基金(以下基金と言います)は厚生労働大臣の認可を受けた規約により運営しています。したがって規約の書きぶりによって基金の運営は異なります。

 

 

 

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平成26(2014)年2月

 

 厚生年金基金改正法への各基金の対応策は?

 

 厚生年金基金の改正法が、この4月1日から施行されることとなり、各基金はその対応策をまとめる必要を迫られています。基金の対応策を整理すると、4つの類型に分類できます。

 

①基金の存続を指向する、②代行返上、③解散、④当面様子を見る。どの方針にもそれぞれ注意点があります。ここでは、それぞれの対策・方針の問題点を簡単に整理してみたいと思います。

 

 

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平成26(2014)年1月

 

 「代行返上」で負担する厚生年金基金の「独自給付」は

これだけある!

 

 厚生年金基金(以下基金という)は老齢厚生年金の一部を代行しているといわれていますが、それだけではありません。基金は代行以外にいろんな給付をしています。基金が解散すると代行部分以外のこれらの全ての給付はなくなりますが、代行返上の場合はこれらの全ての給付は新しい基金(確定給付企業年金DB)に引き継がれ、ここに残る企業はそれを支えるために相応の掛金負担を覚悟しなければなりません。

 

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平成25(2013)年12月

 

 厚生年金基金の代行返上の実際

 

 “代行返上”という言葉には心地よい響きがあります。厚生年金基金の重荷である代行部分を国に返上して、残りの部分だけを皆で一致団結して運営していけば、すべての問題が解決できると思わせます。

果たしてそうだろうか?以下に考察してみたい。

 

1.代行返上の仕組み

 代行返上とは、厚生年金基金(以下「基金」という)の代行部分を国に返還し、残った上乗せ部分(基本+α部分と加算部分)の権利義務を承継して、確定給付企業年金(企業年金基金)を新たに設立することです。 

 

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平成25(2013)年11月

 

 厚生年金基金の実態を覗いてみよう

 

 今の若者は、年金はずーっと先のことと思いほとんど関心を持っていない。厚生年金保険料や厚生年金基金(以下基金という)の掛金が給料やボーナスからどれだけ天引きされているか、また、それが受け取る年金とどう結びついているか、無頓着である。

 

 一方、現役の中高齢者は、年金に関心を持たずにはいられない。自分はいつになったらどのくらい年金をもらえるのかと不安な日々を送っている。また、年金生活者といえども安閑としてはいられない。ある日突然「当基金は解散します。このため当基金からの年金はなくなります。今まで国に代わってお支払いしていた年金は国がお支払することになります。」という趣旨の手紙が来ないとは限らない。

 

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平成25(2013)年10月

 

 厚生年金基金はどこへ行く

 

「厚生年金基金はどこへ行く」

 厚生年金基金制度は昭和40年に創設され、翌41年に初めて厚生年金基金(以下基金という)が設立認可された。そして高度経済成長とともに基金は順調に増加し、平成9年度末には1,874基金に達した。しかし、その後は景気の長期低迷を反映して減少に転じ、更にDC制度(平成13年)、DB制度(平成14年)の創設によって、多くの基金が他制度に移行したため平成16年度末には半減し838基金となった。更に、その後も減少し続け平成24年度末には560基金、ピーク時の3割を割ってしまった。しかもそのほとんどが解散もしくは解散予備軍という有様である。

 

 

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平成25(2013)年2月

 

 今後の厚年基金問題のとらえ方(2)

・・・社会保障審議会専門家会議のまとめ

 

 去る2月1日、社会保障審議会年金部会の専門家会議のまとめ案が出され、大筋で了承されました。この案は民主党政権下の有識者会議からスタートし、制度そのものの廃止を展望したもので、自民党政権にはかなり反論もあり、その調整が注目されていますが、財務内容の劣化した基金の解散を促進すること自体には両党とも異論がなく、その方向で法改正等が立案されてゆくものと思われます。

 

1.当面の代行割れ基金への対処策・・・特例解散制度の強化により解散の促進  

 

 

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平成25(2013)年1月

 

  今後の厚年基金問題のとらえ方(1)

・・・解散か脱退か?

 

 厚生労働省では、昨年、民主党内閣の時代から、厚生年金基金の抜本的見直しに取り組み、10年後にはこの制度を廃止することを展望して基金の解散を推進するという基本方針案を社会保障審議会の専門委員会に諮っています。全面廃止案には自民党からも異論がありますので、新政権下での結論は未知数ですが。現在の指定基金やその予備軍のような困窮した基金は解散させる方向で考えていることは与野党とも同じ考えです。

 こうした情勢の中で、かなりの数の基金は解散を視野に入れて今後の運営方針を考えるようになりました。一方加入企業としては、解散の流れに乗って行くのと、この際任意脱退するのとの選択に迷っておられるところも多いようです。

 

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平成24(2012)年12月

 

 従業員のモチベーションは向上のために

 

 退職金制度改革の前提として、給与制度の変更を相談されることもしばしばあるが、多くの従業員にとって、かなり将来の問題である退職金と違って給与制度は明日からの問題で、従業員の関心も一段と強いのが通例である。しかし、関心が強いだけに労使のコンセンサスの醸成には一工夫も二工夫もこらさなければならない。

 

 

 従業員というのも経営者が思うほどは経営者の思いを理解することは少ないのが通例である。例えば、ある企業で業容が拡大し業績も上がったので経営者が従業員の貢献に報いる為にと賃金のベース・アップを実施した。

 

 

 

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平成24(2012)年11月

 

 確定拠出年金 ―「マッチング拠出」と「給与振替型」の魅力

 

 2001年10月に導入された、確定拠出年金(DC)制度は、本年7月末には、企業型の加入者が440万人を突破し、確実に定着しつつあります。老後の資金を潤沢にするため、企業だけでなく、従業員も掛け金を上乗せ出来る様にして欲しい、との要望は以前からありましたが、本年1月からようやく可能になりました。

 

 8月末までに、既に1,200社以上で、「マッチング拠出」が導入されています。「マッチング拠出」(従業員による掛け金の拠出)の魅力は、その節税効果にあります!

 

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平成24(2012)年10月

 

 厚生年金基金のむかう方向(その3)

― 任意脱退についての長野地裁の判決について

 

 8月24日に長野地方裁判所で注目されていた厚生年金基金からの任意脱退の可否についての判決が下されました。結果は原告勝訴で、このケースでは、代議員会の反対にもかかわらず任意脱退は有効であるというものです。

 

 この判決には、新聞記事やコメンテーターからさまざまな解説が出ました。

 

 

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平成24(2012)年7月

 

  年金積立不足の貸借対照表への即時計上について(その2)

 

 会計基準の変更により、退職給付債務の積立不足(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務債務)を貸借対照表に即時認識する事になる、と(その1)でお伝えしました。

具体的には、以下の通りとなります。

 

・2013年4月1日以降に開始する会計年度の期末から(2014年3月末)実施

・連結財務諸表のみに反映させ、当面、単体財務諸表には反映させない

 

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平成24(2012)年2月

 

 いよいよ始まった確定拠出年金(DC)のマッチング拠出

 

 年金確保支援法の成立により、永年待ち望まれていた、企業型確定拠出年金(DC)の「従業員の上乗せ拠出(いわゆるマッチング拠出)」が、本年1月から可能になりました。1月15日付の日本経済新聞によると、野村証券など60社超の企業が導入することが明らかになっています。では、なぜマッチング拠出が、それほど待ち望まれていたのでしょうか?

 

 それは、税制面での優遇を受けられるため、個人で金融商品に投資するのに比べ、はるかに有利であるからです。

 

 

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