企業年金の現場から H26.05

厚生年金基金に関するもう一つの法改正!

 

企業は明確な決断を求められている。

 厚生年金基金の法令が刷新され、各基金としては、今後の歩むべき道を明確に選択しなければならない時期に差し掛かったといえよう。

 ある基金では、2月の代議員会で、事務局が当面の財務改善のために掛金の引き上げを提案したところ、長期展望なき掛金引上げには応じられないという声が圧倒的に多く、掛金引上げ案が否決された事例もある。要するに事務局任せ、幹事金融機関任せでなく企業が自主的に基金の在り方を判断すべき段階に来ているということだ。

 

 判断すべき選択肢は、①今後もできるだけ存続を図る、②代行返上を目指す、③解散を目指す、④ ①~③には付き合えないので脱退する、の4つである。①は超優良基金にしかできないことだから、ここでは論外とする。②についても、基金の今のような条件を今後も支え続けるのだから、やはり超優良乃至それに準ずる基金でないと、将来の運営コストの上昇に耐えきれない。(26年1月、2月の「企業年金の現場から」をお読みいただきたい) では③の解散と④の脱退はどう評価すればよいか?

 

厚生労働省も長期の解散所要期間を示唆

 解散を考えるとき、大切なポイントの1つはそのタイミングである。

 厚生労働省が社会保障審議会企業年金部会に出した資料によると、一般の解散手続きに要する期間は、代議員会で解散の方針を議決してから解散手続き完了までで、「概ね16か月」と示されており、特例解散の場合はこれに加えて、「概ね4か月」かかり、合計20か月を要することになっている。

 この企業年金部会を傍聴したところでは (当相談センターでは、公開の審議会等のすべてを傍聴している)、一委員の質問に対し、政府側が「(基金の解散申請が集中すると)日本年金機構、企業年金連合会、各解散指向の基金で作業の負荷が高まる。」と述べており、さらに、その委員が「たとえば企業年金連合会あたりの人を増やすことはできるのですか? または何らかの応援とかは考えられるのですか?」という質問に対し、「状況により相談することにはなるが、やはり各機構の予算や人員の制約の中でということになる。」と答えており、解散指向基金の混みようによっては、解散認可

の相当な遅延も考えられる。

 さらに、この解散手続きで、基金事務局を事務的にサポートする幹事金融機関の支援体制も気になる。この作業は金融機関にとっては今後の手数料収入を打ち切るための作業になる。

 

様子見と迷いのコストは大きい

 厚労省が16か月とか、20か月というのは、解散方針を正式に決めてからの所要期間で、今後市場の改善に希望をつなぎ、代行返上や存続計画へ向かう可能性を期待して、決断を1年、2年と先送りすると、加入企業がその間3年、4年にわたって現行の高い掛金を払い続けることになる。即時解散や脱退の後に将来分の代替DCを設定したところ、厚生年金基金の「追加掛金」(標準基本掛金以外の掛金、つまり、基金に加入しなかったら払わなくて済んだ掛金)の4分の1の掛金で基金の加算給付相当額を支給できることとなったケースもある。

 このような、事情を勘案すると、即時解散を決断し、最小限のコスト負担で撤収できるのであればともかく、ぐずぐずした挙句の解散や代行返上は最悪の選択となりかねい。それなら多少高い脱退拠出金を払っても、早期に脱退を果たす方が得策であるというケースもありうる。このあたり、突っ込んだ定量的計量比較が必要となろう。

 

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