企業年金の現場から H26.04

確定拠出年金の最新動向

 

 厚生労働省が発表した平成25年12月末の確定拠出年金(DC)の施行状況を見ると、企業型の実施事業主数は18千社、加入者数465万人となっています。これに個人型の加入者を加えると483万人となり、本格的な普及期を迎えたと思われます。今回はDCの最新動向を概観してみたいと思います。

 

◆大企業で採用すすむ

 2014年3月期に、会計ルールが企業年金の積立不足を負債に計上するよう変更されました。従来は確定給付企業年金だけで退職金の準備をしていた大企業で、DCを併用する企業が増えてきています。会計ルールの変更が背中を押している面があるのでしょう。NTTや全日空、富士通などが新たにDCを導入します。この動きが他の大企業にも波及すると思われます。

 

◆拠出限度額の引き上げ

 引上げ額がわずかなためかあまり話題となりませんが、DCの拠出限度額が引き上げられる予定です。新しい限度額は以下の通りです。なお、個人型の拠出限度額は、今回は変更ありません。

 他の企業年金がない場合:現行の月額5.1万円が月額5.5万円に

 他の企業年金がある場合:現行の月額2.55万円が月額2.75万円に

 

◆厚生年金基金の受け皿として

 厚生年金基金から任意脱退したり、厚生年金基金が解散したりした場合は、加入事業所は上乗せ給付の代替制度を検討する必要があります。その際、積み立て不足が発生しない制度としてDCが見直されています。小規模企業でも導入可能な総合型の制度があることも採用を後押ししているものと思われます。

 

◆NISAのスタート

 本年1月にNISAがスタートし、大々的にPRされたこともあり、注目をあびています。DCも運用益が非課税となる点はNISAと似ています。これを機会にマッチング拠出を利用する人が増えるかもしれません。

 

◆今後の課題

 企業年金連合会が平成25年年12月に公表した「第4回確定拠出年金制度に関する実態調査によると、およそ4分の1のDC規約で“掛金額が拠出限度額に達している人がいる”という結果になっています。今回、拠出限度額が引き上げされたとしても、大きく改善することは望み薄であり、さらなる引き上げが望まれます。

 また、マッチング拠出制度の「従業員の拠出限度額が事業主掛金額以下」という制限も見直しが必要だと感じています。若い人の事業主掛金額は低いのが一般的です。比較的余裕がある若い人が老後資金を準備したいと考えても、わずかな額しか拠出できないという問題があります。今後は公的年金に多くを頼れないことを考えると、事業主掛金と従業員掛金の合計額が拠出限度額以内」に制限が緩和させることが望まれます。

(葉山 俊夫)

 

「企業年金の現場から(H27年以前)」に戻る