企業年金の現場から H26.12

確定拠出年金の新しい展望

 

 少子高齢化による公的年金の縮小が避けられない状況の中、企業年金拡充の重要性が増しています。特に確定拠出年金への期待は高く、本年もいくつかの制度改正が行われました。その内容について簡単に再確認してみましょう。

 

1.資格喪失年齢の引き上げ(2014年1月1日より)

 従来の企業型DC制度では、加入者が60歳になると資格が喪失となりました。しかし、確定拠出年金法の一部改正により、規約を変更することで65歳まで資格喪失年齢を引き上げることができるようになりました。この変更を行うと、資格喪失年齢到達時または60歳以上資格喪失年齢未満の年齢での退職時に資格を喪失し、老齢給付金の受給権を得ることになります。

 但し、同一の事業所において、60歳以前から継続して雇用されていることが必要です。継続して雇用されることとは、定年年齢引き上げにより60歳以降も雇用されること、もしくは、資格喪失日が属する月の同月内に「再雇用」されることです。

 いくつか注意点もあります。

 

 ①60歳以降の加入期間は確定拠出年金の通算加入者等期間には含まれません。

  退職所得控除の算定基礎になる勤続期間も、60歳までの確定拠出年金の加入者期間となります。

 ②規約が変更されると加入者は、60歳に到達した時点で加入者とならないことができなくなります。継続雇用され60歳から老齢給付を受けることを予定していた人も、新規約に定める年齢まで受給ができなくなりますので、この点についての周知はしっかり行う必要があります。

 

2.厚生年金基金から確定拠出年金への移換要件の緩和(2014年4月1日より)

 これまで、厚生年金基金の脱退一時金を確定拠出年金へ移換するためには、以下の3点の要件が必要でした。

 

 ①確定拠出年金の加入者もしくは運用指図者であること

 ②厚生年金基金の加入員資格喪失後1年以内であること

 ③確定拠出年金の加入者の資格を取得してから3ヵ月以内であること、

 

 今回の要件緩和により、③の制約がなくなり、確定拠出年金に加入後3ヵ月を超えていた場合でも、厚生年金基金の脱退一時金を確定拠出年金への移換することが可能となりました。

 厚生年金基金から脱退し、代替制度を確定拠出年金とする場合は、脱退一時金の移換が可能であることを理解しておく必要があります。

 

3.企業型確定拠出年金の拠出限度額引き上げ(2014年10月1日より)

 企業型年金の拠出限度額が10月1日より引き上げられました。

 

 ①他の企業年金がある場合: 25,500円 → 27,500円

 ②他の企業年金がない場合: 51,000円 → 55,000円 

 

 規約に限度額が決められており、規約改正によって限度額を変更する場合には、労使合意を得て所轄厚生局に変更承認申請を行う必要があります。

  確定拠出年金制度の拡充については、現在も様々な検討が続いています。自社にとって好ましい改正内容を取り入れ活用していけるよう、新情報への感度を高めておくことをお勧めします。

(川上 壮太)

 

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