企業年金の現場から H26.10
企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の引上げ
確定拠出年金法施行令の改正に伴い、企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額が、本年10月1日より引上げられる予定です。平成13年に同制度が導入されて以来、3度目の引上げとなります。なお、個人型については、変更はありません。
〈拠出限度額の推移〉
他の企業年金なし 他の企業年金あり
平成13年10月 月額36,000円 月額18,000円
(制度創設時)
平成16年10月 月額46,000円 月額23,000円
平成22年10月 月額51,000円 月額25,500円
平成26年10月 月額55,000円 月額27,500円
企業型の拠出限度額については、公的年金と企業年金を合わせ、退職前の所得の6割を確保する、という考え方から算出されていました。また、厚生年金基金の上乗せ部分の給付が、必要とされる企業年金の額の5割程度をカバー出来ていたので、「確定給付型の年金制度がある」企業の拠出限度額は、「ない」企業の半額とされました。しかし、企業年金の双璧をなす、確定給付企業年金(DB)には、拠出限度額の制限がありません。企業型確定拠出年金(DC)についても、より一層の引上げが期待されるところです。
実際の掛金拠出額が、拠出限度額一杯に達している企業は、全体の2割弱となっている
ようです。これは給与や役職に合わせて、掛金を増加する企業が多く、定年が近づいた時点で、上限に達するように設計されているからである、と考えられます。
この掛金拠出額の未達部分を有効に活用する方法として、マッチング拠出(従業員も掛金を拠出する仕組み)が考えられます。平成24年1月に開始されたマッチング拠出は、既に約4千社で導入されており、企業型確定拠出年金(DC)実施企業全体の2割を超えています。
マッチング拠出は、掛金の拠出時、運用時、受領時の3度にわたって税制の優遇を受けられる、非常に有利な仕組みです。
また、年金制度をより深く理解し、従業員自らも老後に備える準備に取り組むきっかけともなりますので、ぜひ導入する事をお勧めします。
ただし、現在のマッチング拠出には、従業員の拠出額は企業の拠出額を超えられない、という使い勝手の悪い制限があります。これについては、変更する方向で議論が進められている模様で、早期に改善されることが望まれます。
(田中 均)