企業年金の現場から H25.02

今後の厚年基金問題のとらえ方(2)・・・社会保障審議会専門家会議のまとめ

 

 去る2月1日、社会保障審議会年金部会の専門家会議のまとめ案が出され、大筋で了承されました。この案は民主党政権下の有識者会議からスタートし、制度そのものの廃止を展望したもので、自民党政権にはかなり反論もあり、その調整が注目されていますが、財務内容の劣化した基金の解散を促進すること自体には両党とも異論がなく、その方向で法改正等が立案されてゆくものと思われます。

 

1.当面の代行割れ基金への対処策・・・特例解散制度の強化により解散の促進

    

 現存の厚生年金基金562基金のうち約半数が代行割れ、加算部分も積立がある基金は僅か10%という状態では、これを放置すると、厚生年金本体に重大な損失を与えることとなるので、まず、これら困窮基金を対象に、特例解散を強化して解散を促進することが必要であるいう考えです。その具体策は次のように考えられています。

 

 (1)従来から、【A案】解散拠出金の分割納付期間を延長する、【B案】拠出金額のさらなる軽減を行う、という2つの案が提示されていましたが、【B案】は厚生年金基金本体に影響を与えすぎるということで、【A案】だけが認められ、分割納付期間を当初から15年とする(従来は当初目標5、10年が難しくなったとき事後的に認められた)ことも可能になりそうです。

 (2)解散の申請とともに、加算部分の支給を停止する等解散基金の資産を保全する処置をとることになります。

 (3)解散拠出金の分割納付途上で倒産等で不払い企業が出た場合も従来のように解散時の全企業の連帯債務とせず、個別債務として扱う方針です。この処置もその不払い分は厚生年金本体の損失になるのですが、これは解散を促進するためにやむを得ないという判断です。

 

2.代行制度自体のあり方・・・厚労省は制度廃止を目指す。

 

 現在健全な基金も将来代行割れとなる可能性があり、もし、その場合も厚生年金本体に財政リスクを負わせないことを保障する必要があるとすれば、存続する基金は、①財政検証で非継続基準を満たし、②代行部分に対して1.5倍以上の積立水準を有し、③代行割れしても、特例解散のような本体にリスクを及ぼす措置はなく、且つ④所定の基準を下まわれば解散命令も出される(それでも手遅れのこともあるが)といった厳しい条件が要求されると述べており、結局この制度そのものの存続に大きな疑問を投げかけています。

 

3.健全な基金のシフト先・・・・具体化の見通しなし

 健全な企業や困窮度の軽い基金は、むしろ他の制度にシフトすべきであり、中小企業にも使いやすい企業年金のあり方について検討すべきであるとしていますが、この課題は従来から必要性を指摘されつつも、今回の意見書でもアイディアを述べる程度にとどまり、提案としては未成熟なままです。その難しさを自覚してか、私的年金の助成策にまで話しを広げている状態です。

  

 このような制度の運営の基本方針の変更に対し、基金自体やその加入者である企業がどう対処すべきかという問題については、現在起こりつつある事例や将来の展開を予想しつつ、次回に記載することとします。

 

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