企業年金の現場から H24.07
年金積立不足の貸借対照表への即時計上について(その2)
会計基準の変更により、退職給付債務の積立不足(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務債務)を貸借対照表に即時認識する事になる、と(その1)でお伝えしました。
具体的には、以下の通りとなります。
・2013年4月1日以降に開始する会計年度の期末から(2014年3月末)実施
・連結財務諸表のみに反映させ、当面、単体財務諸表には反映させない
本年3月末からの連結貸借対照表には「その他の包括利益累計額」という科目が記載されています。これは、(単体)貸借対照表の「評価・換算差額等」とほぼ同じで、「その他有価証券評価差額金」「繰延ヘッジ損益」等が含まれています。
連結貸借対照表上で未認識債務を即時認識する時には、「その他の包括利益累計額」を減算するとともに、税効果を加味し、「繰延税金資産」を計上することになります。
ここで即時計上された未認識債務は、これまで通り一定の期間で償却され、損益計算書に「退職給付費用」として計上されます。この結果、一旦減額された「その他の包括利益累計額」が増加し、代わりに「利益剰余金」が減少することになります(これを、リサイクリングと呼びます)
つまり、「注記」されていた数字が、連結貸借対照表に反映されますが、損益計算書上は、これまでと変わらないことになります。
なお、即時認識と同時に、下記の「名称の変更」が行われます。
・「退職給付引当金」→「退職給付に係る負債」
・「過去勤務債務」→「過去勤務費用」
・「前払年金費用」→「退職給付に係る資産」
・「期待運用収益率」→「長期期待運用収益率」
では、単体財務諸表のみを作成している企業には、何ら影響は無いのでしょうか?
「開示項目の拡充」や「期待運用収益率の考え方の明確化」に関しては、単体財務諸表にも適用されます。
また、1年遅れの2014年4月1日以降に開始される事業年度からは、下記の変更も実施されます。(実務上困難な場合には、さらに1年遅れることも認められる)
・退職給付見込み額の期間帰属方法の見直し →「期間定額基準」又は「給付算定式基準」の選択適用
・割引率の見直し →「退職給付の支払見込期間・給付額を反映した単一の加重平均割引率」又は「退職給付の見込み期間ごとに設定された複数の割引率」の選択適用
前回お伝えした通り、国際会計基準(IFRS)との共通化(コンバージェンス)の作業は、今後も続くと考えられ、会計基準の変更に、絶えず注意を払って行く必要があります。