企業年金の現場から H26.06

厚生年金基金に関するもう一つの法改正!

 

 本年4月1日から施行された「改正厚生年金保険法」は、厚生年金基金(以下「基金」)の在り方について、基金の解散や代行返上といった抜本的改変を目指すものですが、もう一つ、基金と企業年金連合会(以下「連合会」)のかかわり方についての改正点が注目されます。

 それは、連合会が一元的に行って来た短期間加入(基金により異なります)の「中途脱退者に対する年金の支給義務」業務です。これまで、基本年金(老齢年金給付、以下同じ)の支給義務を基金から連合会へ中途脱退者の申出により移転する事が出来ましたが、今回の法改正・施行によりこの移転が廃止されました。今後、中途脱退者の基本年金は基金が受給待期者として管理し、受給資格取得時に基金から年金給付されます。

 具体的には、連合会が行って来た中途脱退者の年金記録の管理、短期の加入期間に係る年金給付業務を基金が取扱う事になり、基金は事務量の増加や資産運用の責務増大等色々なリスクやコスト負担等が増大する事になります。

 

 これまでの制度は、短期間加入の中途脱退者の基本年金と脱退一時金相当額(加算部分)の支給義務を連合会に移転する事により、長期間に亘る年金記録が一元管理され将来確実に年金受取が可能となる仕組みでした。

 今回の法改正によりこの仕組みが廃止され、企業年金制度のポータビリティが弱体化しました。

また、基金の運営状況によっては、将来、加入事業主の掛金負担の増加が予想されます。事業主と中途脱退者にとってメリットのない改正となりました。しかし、この改正の狙いを、代行制度を早期に廃止し、国が厚生年金を一元管理し将来の年金給付に関する混乱を回避すると同時に、その加入者や受給者等の不安と不信を払拭するものと考えれば、健全な制度構築の一歩とも理解できます。

 

 上記はいずれも基本年金に関する変更であり、脱退一時金相当額(加算部分)の移換は従来通りで変更はありません。基金解散の場合、基本年金(加入員・受給者の代行部分)は国に引継がれ、国から給付が受けられます。残余財産の分配金がある場合は、それを企業年金連合会に移換し、年金で受取ることも可能です。

(高橋 廣)

 

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