企業年金の現場から H24.11

確定拠出年金 ―「マッチング拠出」と「給与振替型」の魅力

 

 2001年10月に導入された、確定拠出年金(DC)制度は、本年7月末には、企業型の加入者が440万人を突破し、確実に定着しつつあります。老後の資金を潤沢にするため、企業だけでなく、従業員も掛け金を上乗せ出来る様にして欲しい、との要望は以前からありましたが、本年1月からようやく可能になりました。

 

 8月末までに、既に1,200社以上で、「マッチング拠出」が導入されています。「マッチング拠出」(従業員による掛け金の拠出)の魅力は、その節税効果にあります!

 

①掛け金全額が所得控除の対象になる!

 サラーリーマンの方には馴染みの無い名称ですが、毎月2万円を拠出した場合「小規模企業共済等掛金控除」として、24万円全額が所得控除の対象となります。生命保険や介護医療保険の控除が合わせて12万円までなのと比べ、多額の控除となります。

 仮に、独身、年収300万円とすると、「所得税」や「住民税」が年間3万6千円減少し、40年間では144万円の節税効果となります。

 

②運用益が非課税になる!

 20歳の人が、毎月2万円の拠出を40年間継続し、年利回りが2%としましょう。

 40年後の残高は、1,464万円に達します。個人で行えば、運用益に20%課税されて1,341万円となるので、123万円もの節税効果があることになります。

 

③給付時に、退職所得控除や公的年金等控除の対象となる!

 一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」 

 が適用され、ここでも節税効果が得られます。

 

 ただし「マッチング拠出」に拠出できる金額に制限がありますので、留意してください。「給与振替型」は、税金だけでなく、社会保険料も削減できます!「年金制度が無い企業」に勤務している従業員は、節税の恩恵を受けることが出来ないのでしょうか? 

従業員のみが掛け金を支払い、確定拠出年金制度を導入する方法があります。それが、「給与振替型」です。

 例えば給与の一部を「セカンドライフ手当」等とし、従業員の希望により「そのまま給与として受け取る」か「確定拠出年金の掛け金として拠出する」かを選択できる「給与振替型」を導入すれば良いのです。

これにより、企業が掛け金を支払うことなく、確定拠出年金制度を導入し、「マッチング拠出」と同じような恩恵を、従業員が受ける事が出来ます。

 

①給与が減少したことになるので「社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)」を削減できる!

 「マッチング拠出」と同じ条件(20歳、独身、年収300万円、毎月2万円を拠出)の例で計算すると、40年間では138万円削減できます。

 

②給与が減少したことになるので「税金」も削減できる!

 同じ条件の例では、40年間で「所得税」「住民税」を80万円節税できます。

※①と②を合計すると、その効果は218万円にもなりますが、一方で、厚生年金保険料が削減されたことにより、将来受け取る厚生年金額も減少します。

 標準報酬月額にもよりますが、上記の例で、年間5~6万円、20年受け取った場合100~120万円程度の減少が見込まれますので、この点に留意する必要があります。

 

③運用益が非課税になる!

 「マッチング拠出」と同様に、利回りを2%とすると、40年間で123万円もの節税効果があることになります。

 

④給付時に、退職所得控除や公的年金等控除の対象となる!

 一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、「マッチング拠出」と同様の節税効果が得られます。

 

⑤雇用主も「社会保険料」を削減できる!

 支払う給与が減少したことになるので、雇用主が支払う「社会保険料」も削減されます。上記の例では、40年間で148万円削減されます。

 ただし、「確定拠出年金制度」の維持に、40年間で20~30万円程度の費用が発生すると見込まれるので、雇用主の受ける恩恵は、実際はもう少し減ります。

 

「税金」や「社会保険料」の削減に多大な効果が期待できる「マッチング拠出」と「給与振替型」の魅力ぜひこれらを導入し、その恩恵を受けようではありませんか。

 

(田中 均)

 

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