企業年金の現場から H26.08

厚生年金基金解散へ向けての対応

 

 厚生年金基金の改正法が施行され、解散に向けて方針を固めた基金の話が数多く聞かれるようになりました。こうした状況の中でご質問が多いのは、解散した後に、これに替る代替制度をどうすればよいかということです。 

 なかには解散しても、代替の年金制度は考えていないという企業もありますが、「厚生年金基金の加算部分の掛金水準の一部を振り向けるだけでも、基金から貰える予定の年金を上回る年金給付の設計が可能ですよ」とご説明すると、考えを変えられるケースも多々あります。厚生年金基金を解散するには加入員の3分の2の同意が必要で、これを取るためにも、また、労使間の信頼関係維持のためにも、何らかの代替措置を導入するのが適切でしょう。基金の加算掛金の中で、加算特別掛金といった掛金は、過去に積み立てた年金資産が当初予定の積立額に不足する分を補填するものです。このことからも、加算部分の替わりとなる代替の企業年金は、基金の現在の加算掛金よりかなり少ない掛金で設計できることが、ご理解いただけるものと思います。代行返上の場合は、このかなり割高な基金の加算掛金が維持される計画がほとんどです。さらに増額される計画も散見されます。こうなると、DBやDCといった代替企業年金制度の何倍も掛金が高くなることも十分に考えられるのです。

 

 改正法の施行に合わせ、基金解散の際、(残余財産があれば)従業員に分配される一時金を、事業所単位で新企業年金制度へ持ち込むことも可能になりました。加入歴の短い加入員が一時金を貰っても、金額が少ないため、どこかに消えてしまい、何も残らない怖れも大きいと思われます。基金で積み立ててきた資金を新企業年金制度へ移し、これまで収めてきた額より少ない掛金を支払うだけで、企業は将来の従業員の年金の充実を維持向上させることができます。これを実行することが、企業に求め

られている責務ではないでしょうか。

 

 小規模な企業でも加入しやすいグループ型(総合型)のDB、DC制度もありますから、独自に制度を作ることを心配される必要はありません。ただ、新年金制度を立ち上げるには、1年から1年半はかけないと良い制度となりません。解散はまだ先と考えずに、今から準備を進めることをお薦めします。当NPO法人でも、基金の動きへの対応を、どう進めたらよいかについてのご相談にお応えしています。基本的なご質問・ご相談への対応は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

(川上壮太)

 

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