企業年金の現場から H25.11

厚生年金基金の実態を覗いてみよう

 

 今の若者は、年金はずーっと先のことと思いほとんど関心を持っていない。厚生年金保険料や厚生年金基金(以下基金という)の掛金が給料やボーナスからどれだけ天引きされているか、また、それが受け取る年金とどう結びついているか、無頓着である。

 一方、現役の中高齢者は、年金に関心を持たずにはいられない。自分はいつになったらどのくらい年金をもらえるのかと不安な日々を送っている。また、年金生活者といえども安閑としてはいられない。ある日突然「当基金は解散します。このため当基金からの年金はなくなります。今まで国に代わってお支払いしていた年金は国がお支払することになります。」という趣旨の手紙が来ないとは限らない。

 

 この6月に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(以下改正法という)が公布され、来年4月から施行される。国は、「基金をこのまま放置しておくと基金に加入していない厚生年金被保険者や事業主にもリスクが及ぶ。」との懸念から、ほとんどの基金に解散又は他の制度に移行するよう促している。それほどまでに今の基金の財政は健全とは言えないのである。

 基金の加入員と年金受給者(以下加入員等という)の数はおよそ700万人である。その多くは基金との関わりが深いにもかかわらず基金への関心は浅い。しかし、改正法が施行され、基金解散又は他制度への移行となると、加入員等も基金設立事業主(以下事業主という)も無関心ではいられない。火の粉がわが身に降りかかってくるからある。

 

 基金は基金規約(以下規約という)に基づき運営されており、国は、基金に対して規約や基金業務の概況を加入員に定期的に周知することを義務付けている(注)。また、年金受給者には周知するよう努めることとされており(注)、行政監査では加入員と同様に周知することを求めている。加入員等は将来の自分自身のため、また、事業主は将来の事業経営のため、「基金だより」やホームページ等で基金の実態を把握し、なお足りなければ基金事務局に開示を求めることができる。そして代議員を通じて意見を述べて、自分の意思を基金運営に積極的に反映させなければならない。いま、その行動を起こす時期に来ている。

 

(注)

[厚生年金保険法第177条の2(業務概況の周知)]

基金は、厚生労働省令で定めるところにより、その業務の概況について、加入員に周知させなければならない。

2基金は、前項に規定する業務の概況について、加入員以外の者であって基金が年金たる給付又は一時金たる給付の支給に関する義務を負っているものにも、できる限り同様の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

[厚生年金基金規則第56条の2(業務概況の周知)]

基金が法第177条の2第1項の規定に基づき、その業務の概況について加入員に周知させる場合においては、毎事業年度1回以上、当該基金の規約及び当該時点における次に掲げる事項(第2号から第6号までに掲げる事項にあっては、当該直近の概況。以下この条において「周知事項」という。)を加入員に周知させるものとする。

①.年金たる給付及び一時金たる給付の種類ごとの標準的な給付の額及び給付の設計

②.加入員数及び年金たる給付及び一時金たる給付の種類ごとの受給権者の数

③.年金たる給付及び一時金たる給付の種類ごとの支給額その他年金たる給付及び一時金たる給付の支給の概況

④.基金が徴収した掛金及び徴収金の額、徴収時期その他掛金及び徴収金の徴収の概況

⑤.年金給付等積立金の額と責任準備金の額及び最低積立基準額との比較その他年金給付等積立金の積立ての概況

⑥.年金給付積立金の運用収益又は運用損失及び資産構成割合その他年金給付等積立金の運用の概況

⑦.基本方針の概要

⑧.その他基金の事業に係る重要事項

(近藤嘉正)

 

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