企業年金の現場から H26.01

「代行返上」で負担する厚生年金基金の「独自給付」はこれだけある!

 

 厚生年金基金(以下基金という)は老齢厚生年金の一部を代行しているといわれていますが、それだけではありません。基金は代行以外にいろんな給付をしています。基金が解散すると代行部分以外のこれらの全ての給付はなくなりますが、代行返上の場合はこれらの全ての給付は新しい基金(確定給付企業年金DB)に引き継がれ、ここに残る企業はそれを支えるために相応の掛金負担を覚悟しなければなりません。

      

①基金の給付形態には代行型と加算型があります。代行型は代行部分と+αを合わせた年金「基本年金」のみを給付するタイプであり、加算型は「基本年金」に加えてもう一つ「加算年金」を給付するタイプです。現存する基金の多くは加算型給付形態を採っています。基本年金の+αと加算年金は広い意味で独自給付といえます。

 

②加算型を採っている基金は、加算年金の受給要件を満たしていない人には脱退一時金を支給しており、給付要件を満たしている人には加算年金に代えて一時金を選択することができるようにしています。更に、加入員が加入中に死亡したときや受給者が保証期間内に死亡したときは遺族に遺族一時金が支給されます。これらの給付も広い意味で独自給付といえます。

 

③基金は厚労大臣の認可を受けた規約に基づき運営しており、例えば特別支給の老齢厚生年金の受給権を有する人が雇用されて被保険者となっている場合は、国は厚生年金保険法(46条)の規定により、給与(総報酬月額相当額)と年金額が一定の水準を超えると年金額を減額又は全額支給停止しますが、基金は、国が全額支給停止したときに、それぞれの規約により、代行部分の減額又は全額支給停止をすることができるとされております。しかし、このことは、規約にこの規定がなければ基金は代行部分の減額又は全額支給停止をすることがでない、ということで基金は代行部分を満額支給することになります。これも独自給付といえます。

 

④国は失業中の特別支給の老齢厚生年金受給権者が失業手当(基本手当)を受給している間はその年金の支給を停止します。基金は、規約に国と同様に支給停止する規定をしなければ、国の支給停止にかかわらず基本年金を支給することになります。

 

⑤国は在職老齢者が雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受給していると、最高で賃金(標準報酬月額)の6%に当たる額を年金額から差し引きます。基金は規約に国と同様に停止する規定をしなければ、国の支給停止にかかわらず基本年金を支給することになります。

 

⑥国は遺族厚生年金や障害厚生年金を受給している人のうち老齢厚生年金受給権を有する人については老齢厚生年金の支給を停止していますが、ほとんどの基金は規約に支給停止規定を盛り込んでいないため、国の支給停止にかかわらず基本年金を支給しています。

 

⑦国は被保険者期間が25年に満たない場合は老齢厚生年金受給権を付与していませんが、基金は加入員期間が1か月以上あれば基本年金を給付することとされております。

 

以上

(近藤嘉正)

 

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