企業年金の現場から H26.09
厚年基金解散の後始末
○解散後、基金事務局が薦める私的年金
厚生年金基金からの代行返上の提案は、十分注意しないと、思わぬ負担を負うおそれがあるということは7月号でお話しましたが、一方解散の場合、基金事務局が基金の加算部分を引き継ぐような形で、新設の企業年金を提案していることが多いようです。こういう提案にどう対処すべきでしょうか。
概してこういう基金は代行返上したくても財務内容が悪くてできないので、一旦解散した上で、僅かばかりの残余財産を基に、掛金をつぎ足した形で、基金型企業年金とし て生き残ろうとするものです。そこに無理な背伸びの計画となる可能性があります。
あなたの財産の運用に失敗した証券営業マンが、その残余金に追加拠出する新しい運用案を作っ薦めに来たらどう対処しますか?それがこの種の企業年金案に対してとるべき基本姿勢です。
○新制度提案のチェック・ポイント
①まず提案の設計内容の妥当性です。
高い運用利率を想定したり(咋今の世界の金融情勢から見て、長期金利2.5%でも甘すぎます。)、加入者数が年々増加する見込みで設計しているようでは危険です。
②従来の基金と比べて給付がどれだけ減っているか?
年金給付額は余り減らさず、基金の終身年金を20年、15年の確定年金にして、実質的に給付減額しているものもあります。長寿化する将来が不安です。
③注意すべきことは、「従来の加算掛金と同程度の掛金で、」という表現です。
従来の加算掛金が、運用資産の目減りを挽回するために、著しく高くなっているということを忘れたのでしょうか、あるいは、皆様方が忘れてくれるよう期待しているのでしょうか。基金解散後に新しく企業年金を設立するのであれば、「今までの割高な掛金より安い掛金で」という呼びかけがあってしかるべきでしょう。
○代替制度の設定と検討にあたいする新旧の諸制度
①基本的には、基金類似の制度として確定給付企業年金やキャッシュバランスで基金の給付体系になるべく近く、実現可能な給付水準の制度を設計してみることです。これがうまくゆかなかったり、面倒だということであれば、下記のような既存の制度から適切なものを選んで加入することも検討できましょう。
②既存のグループ型(総合型)確定給付企業年金:一部の金融機関がグループ型の制度の実績を積み上げています。
③受諾保証型のCB制度:最近2社の生保で、一般勘定利回り+配当で安定運用型の制度を用意しようとしています。
④この際従業員の自主性に期待し、または退職給付債務の圧縮を目的として、確定拠出年金(DC)を導入してみるのも一法です。マッチング拠出(従業員の拠出)も可能となり、10月からは拠出上限額がさらに引き上げられ、十分な給付額が可能となる制度に成長してきました。
これらの制度の検討を行ううちに、基金事務局から提案されているものより、適切なものを見出すことができる可能性があります。
これらの設計、選択に当たっては、各社の既存の制度との整合性や、既存受給者とのバランスも考える必要もあり、人事、財務両面をにらんだ検討が必要で、経験豊かなコンサルタントと相談するのが有効でしょう。