企業年金の現場から R1.10

「総合型確定給付企業年金基金」の外部専門家によるAPUが始まる

9月下旬、総合型確定給付企業年金加入の企業を訪問した際、担当役員より基金だよりに「令和元年度決算より公認会計士等の外部専門家によるAUPが実施される」と記載がありましたが法律で決まっているのですか、またどのような内容か、どのような効果が期待できますかと質問を頂きました。

標記の件、厚生労働省から総合型基金理事長宛に平成30年12月下記内容が通知されています。
その通知の表題は、
「総合型基金おける公認会計士等による合意された手続等の実施にあたっての留意事項(周知)」。
主な内容は、設立形態が総合型である企業年金基金(以下「総合型基金」という)においては、確定給付企業年金法施行規則の一部を改正する省令(平成30年度厚生労働省令第77号)施行に伴い通知した通り年金資産(純資産)が20億円を超えた総合型基金は、2019年度決算(2019年4月1日から2020年3月31日までの間に事業年度の決算をいう)から公認会計士か監査の実務経験がある公認会計士と同等の水準で業務を遂行できる者が行う「あらかじめ手続きを合意して実施する合意した手続業務AUP(Agreed upon procedures)」を受けることになっています。
それ以外の基金については、内部統制の向上を図るため、専門家(公認会計士・年金数理人等)による支援を受けることが望ましいとされています。

制度導入の背景と目的は
資本関係や人的関係のない複数事業主で設立されている総合型確定給付企業年金基金では、自らの掛金拠出分が他の事業所分と混在するため、各事業所では、基金全体の会計の正確性の把握が困難であることから、公認会計士または監査法人等による監査(基金の理事及び職員を除きます)と「あらかじめ手続きを合意して実施する合意された手続(AUP)」を導入し、その結果を基金監事の監査に活用して監事の監査の充実、会計の正確性を図ることを目的としています。

「あらかじめ手続きを合意して実施する合意された手続AUP」とは、実施者(公認会計士または監査法人等)と依頼者との間で確認事項や調査手続等について事前に合意するとともに、当該合意に基づいた手続結果を公認会計士等が依頼者に報告する業務をいいます。
このAUPは、通常の会計監査とは異なり、監査人が財務情報の適正性について「適正」あるいは「妥当」といった主観的な意見を表明するものではありません。あくまでも、事前に合意した確認内容について客観的に判断できる事項を「確認」するものです。
尚、「総合型DBにおけるAUPの円滑な実施に資する」ことを目的に作成したガイドブックが企業年金連合会から発行されています。

公認会計士または監査法人のAUP実施により期待される効果
①外部の専門家による確認がなされることで、事業主及び加入者等の安心感が醸成されます。
②基金の会計の透明性が高まります。
③基金監事では対応が困難な金融機関への残高確認等も可能です。
④外部の第三者による確認がなされるため、基金担当者等の緊張感が醸成されるとともに不正防止にも繋がります。
⑤数多くの内部統制を熟知した専門家と意見交換すること等により内部統制の不備が改善されます。

最後に、公認会計士又は監査法人等によるAUP実施だけでは効果が限られますので、当該事業主は、事業主の責務として基金の事業運営を理解し、基金運営の方々とコミュニケーションを重ねることがとても重要と述べられ、早速、基金だよりの決算報告書分析と上記ガイドブックの内容等について我々と研鑽を積むと決定されました。

文責 高橋 廣

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