企業年金の現場から R1.8

「老後資金としていくら準備すれば良いか?」

金融庁の報告書「老後に約2000万円の備えが必要」の真偽は?

 

 一昨年秋にNPO法人日本FP協会が主催したFPフェアーに来日、講演した米国FPA(米国のCFP会員組織)プレジデントのシャノン・J・パイク氏は日米におけるFPの活動状況は違うが「死ぬ時までにお金が足りるか」は世界中共通の課題だと述べていました。

「準備する老後資金=死ぬ迄の総費用−同総収入−保有する金融資産残高」が方程式です。

“不確定値”が何と多いことでしょうか?

夫妻は其々何歳まで生きるか?どんな生活レベルを希望するか?夫は何歳まで働くか?会社を辞めたら何をするか?夫婦の年金額は?住んでいる家は自己所有か?金融資産をいくら持っているか?お墓はあるか?等々・・・・・

 

新聞やメディアで掴んだ僅かの情報で重要な老後資金準備額を“想像・憶測”するのは適切でしょうか?大きな間違いをする可能性があり、決して得策ではないと思われます。私は、この道のプロであるファイナンシャルプランナーに相談して“ご自分のライフプラン”を作成してもらうことをお奨めします。

企業年金相談センターでは「かんたんライフプラン」を1件10,000円+消費税で作成していますので、ご利用戴きたいと思います。

 

ファイナンシャルプランナーの存在が必要とされたきっかけは「金融の自由化」です。更にその必要性を高めたのが平成16年(2004年)の年金給付減額です。小泉首相の時代、国民の年金が減るという不安に対して「自助努力」「自己責任」が唱えられ始めました。

「自分のライフプランを作成し自助努力を怠るな」、「自らの生活は自分の手で守れ」との方向づけがされました。平成26年(2014年)の年金財政改定方針では所得代替率(現役労働者の給与額に対する老齢年金の受給額の比率)を現状63%から30年後50%へ低下させる、つまり30年間で25%の年金給付減額が公表されています。今年は5年毎の年金財政見直しの年でその内容が注目されていますが、未だに公表されていません。

 

金融庁の審議会が「老後に約2000万円の備えが必要」という報告書を出して以降、老後資金準備額が注目を集めています。

6月26日の日経新聞では『「老後2000万円」個人動く』の見出しでネット証券でのNISAの契約申込みが5月実績の1.7倍に急増、iDeCoも同様に1.8倍に増加したと記されました。

金融セミナーを手掛けるFP会社が「老後に2000万円は本当に必要か緊急会議」と銘打ったセミナーを実施したところ定員の4倍の応募があったともありました。

加えてマネックス証券がこの報告書を受けて緊急に実施した個人意識調査では「86%が老後2000万円では足りないと考えていることが分かった」とされています。

また7月17日の日経新聞では、「老後のお金試算 備え促す」「長く働ける環境欠かせず」のタイトルで民間調査機関の試算をあれこれ紹介しています。50代で最も多い年収500〜750万円未満の層が65歳以降を今の暮らしぶりで過ごそうとすると65歳までに3200万円必要になると記しています。

 

総括すると「2000万円では足りない人が大部分」に軍配が上がると思われます。政治上でのやり取りはさておき、個人の老後の必要資金額に関心が高まることは非常に望ましいことと考えます。経営者や従業員の皆様がこの機会にぜひともフィナンシャルプランナーの活用をはかり、「安心で豊かな老後」の準備を怠らないことを願うものです。

以上 

 

文責::仁科 眞雄

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