企業年金の現場から R1.7

企業型確定拠出年金の規制の行方

2016年のDC法改正により創出された制度では期待されていた役割を十分に果たしておらず、今後の制度変更が本格的に議論され始めました。

厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会が本年2月より開催されています。

その会で関係団体から要望された中から、今後の規制の変化の方向として注目される2点ご紹介します。

 

期待されていた役割とは

2016年のDC法改正は、中小企業向けに企業年金制度の普及・拡大に目を向けられておりました。

そこで、従業員100人以下の中小企業に限り、設立手続きを大幅に緩和した「簡易型確定拠出年金制度」を創設するとともに、iDeCoに加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする、「中小事業主掛金納付制度」を創設しました。

しかしながら、両制度ともにほとんど利用されることなく、中小企業向けの企業年金制度は普及するどころか、厚生年金基金の解散ラッシュとともに縮小してしまいました。

そこで、新しい制度に頼らずに既存のDC制度をより普及させ、国民の老後の所得確保の一層の充実を図る方向に議論は変わりつつあるように思われます。

 

加入可能年齢の引き上げ

働き方改革の影響や人生100年時代等、昨今叫ばれている現状を考慮し、掛金を拠出できる年齢を引き上げる要望が多く出ております。

老後の支えとなる厚生年金の受給開始年齢は段階的に65歳まで引き上げられており、DCの加入可能年齢も厚生年金と同じく65歳まで引き上げられる案になると思われます。

現在でも企業型は同じ事業所で勤め続ける場合に限って、規約で定めれば65歳まで延長できることになっております。

したがって、加入可能年齢の引き上げはiDeCo加入者が対象の中心となり、就労形態による不公平がなくなることとなります。

 

掛金の拠出限度額の引き上げ

現在、企業型DCでは加入者区分によって、月額14,000円から55,000円までとされている掛金の上限額を、引き上げる要望も出ております。こちらは、2016年の法改正の時から取り残された案件であることから、複数の関係団体から要望されているものです。

金融審議会の幻の報告書である2000万円不足問題に対応するために、上限そのものをなくすということもあり得るかもしれません。

 

以上、今後の規制緩和の方向は、「加入可能年齢の引き上げ」と「掛金の拠出限度額の引き上げ」を中心に議論されることと思われます。

この2点の他にも、「受給開始可能年齢」や「中途引き出し」、「脱退要件」などの規制緩和も期待できます。

これらの規制緩和によって、ご自身の掛金額や運用の方法について、今一度見つめ直す機会にされることが望まれます。

加藤 啓之

 

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