企業年金の現場から H31.3

確定給付企業年金基金加入の事業主からの質問事項例について

昨秋から、厚生年金基金を代行返上した確定給付企業年金基金加入の事業主(加入基金は全て異なります)から、当該制度に関する色々な質問を頂き制度の内容を一緒に数回勉強しました(設立後第1回決算なので基金の運営状況を知りたかったようです)。

今回は事業主にとってもっとも重要な事項「企業年金基金の情報開示について」を取り上げます。

M社加入のA基金規約第104条に「業務概況の周知」とあります。

尚、業務概況は毎事業年度1回以上開示しなければなりません。

※規約には制度に関する全ての内容が記入されています。(※参考:規約は数社が基金ホームページからダウンロード、他2社は基金が設立時事業主宛に送って来ていました)。

規約に記載されている周知内容は下記の通りです。

 

1.基金は、基金業務の直近の概況について、以下の事項を加入者に周知させなければなりません。これを「周知事項」と言います。

(1)給付の種類ごとの標準的な給付の額及び給付の設計。

(2)加入者数及び給付種類ごとの受給者の数。

(3)給付の種類ごとの給付の支給額とその他給付の支給概況。

(4)事業主が基金に納付した掛金の額、給付時期その他掛金の給付の概況。

(5)積立金の額と責任準備金の額及び最低積立基準額との比較その他積立金の積立ての概況。

※含む財政検証:継続基準(規約第78条)/ 非継続基準(規約第79条)。

(6)積立金の運用収益又は運用損失及び資産構成割合の他積立金の運用の概況。

(7)基本方針の概要。

(8)その他基金の事業に係る重要事項(代議員会議決事項と報告事項・業務経理・福祉事業等)。

2.周知事項を加入者に周知させる場合には、次の各号に掲げるいずれかの方法によります。

(1)常時各実施事業所の見やすい場所に掲示する方法。

(2)書面を加入者に交付する方法(「基金だより」)。

(3)磁気テーフ゜、磁気テ゛ィスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各実施事業所に加入者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する方法。

(4)その他周知が確実に行われる方法。

  ※上記1の周知事項は多くの基金が「基金だより」を発行し、各実施事業所に配布・周知しています。

3.基金は、周知事項について、加入者以外の者であって基金が給付の支給に関する義務を負っているもの(受給者・待期者)にも、できる限り同様

の措置を講ずるよう努めるとなっています。

※多くの基金が「受給者だより」を発行・配布・周知しています。

4.基金は、毎事業年度終了後4カ月以内(代議員会決議後)に、事業報告書及び決算に関する報告書を作成し、地方厚生(支)局長に提出しなければ

なりません(規約第106条)。

・事業報告書には、次に掲げる事項を記載します。

(1)加入者及び給付の種類ごとの受給権者に関する事項。

(2)給付の支給状況及び掛金の拠出状況に関する事項。

(3)積立金の運用に関する事項。

・決算に関する報告書は、次に掲げる事項を記載します。

(1)貸借対照表

(2)損益計算書

(3)積立金の額と責任準備金の額及び最低積立基準並びに積立上限額との比較並びに積立金の積立てに必要となる掛金の額を示した書類。

・基金は、事業報告書及び決算に関する報告書の書類を、常時、基金の事務所及び実施事業所に備えておかなければなりません。

・加入者又は加入者であった者は、基金に対し、事業報告書及び決算に関する報告書の閲覧を請求することができます。この場合において基金

は、正当な理由がある場合を除き、これを拒んではなりません(※加入事業主と加入者の権利です)。

5.企業年金基金の情報開示「基金だより」等について(事業主の主な声)

 ①「基金だより」配布が遅い(決算後6~9ヵ月後)。

   ※代議員と理事は決算後約3.5ヶ月経過時頃詳細内容を把握。

   ※代議員や理事以外の事業主は陳腐化した情報を見ています。又、情報量もかなり少ないです。

②年金経理と業務経理の実績は計画通り進捗しているか分からない。

   ※事業計画と実績の比較と差異の原因を開示して欲しい。

※基金事務局より詳細の説明があると良い。

③制度概要の理解と情報源を理解出来た。

   ※「規約」・「基金だより」・「基金のホームページ」。

6.最後に

①定年退職者にとって、基金給付の年金と企業から貰う企業年金は、公的年金に次ぐ退職後を生きるとても重要な原資です。

②企業は大切な従業員の為、毎月これらの制度に巨額のお金を拠出し基金や運営管理機関等に積立&運用を依頼しています。

③企業年金加入事業主は、他の経営課題と同じように経営者の視点で制度を継続的に注視して頂きたいです。 

④基金事務局幹部は企業年金業務に専従している方々なので、事業主が色々質問をすると親切に教えて頂けます。同時に、事業主の関心が制度

運営者の責任感醸成に繋がると思います。

 ⑤事業主は、当該基金と他の企業金制度の運営状況を経営会議の議題に取り上げる事になりました。

 文責 高橋 廣

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