企業年金の現場から R3.7

老齢給付金受給に向けた確定拠出年金継続教育の重要性

 

2018年5月より、確定拠出年金導入企業には継続教育が努力義務とされてから3年が過ぎました。継続教育実施状況はいかがでしょうか?

2021年2月26日に企業年金連合会より公表された確定拠出年金実態調査では継続投資教育実施率は75%にとなっています。

また、義務化された継続教育の内容は下記4点となっています。

① 確定拠出年金制度等の具体的な内容

② 金融商品の仕組みと特徴

③ 資産の運用の基礎知識

④ 確定拠出年金制度を含めた老後の生活設計

 

そのうち①~③の「DC制度の基本的な仕組み」や「資産運用の基礎知識」については、8割近くの企業で教育の内容に盛り込まれております。一方で④の「DC制度を含めた老後の生活設計」や「公的年金や社会保障制度」については、4割程度の実施状況となっています。

継続教育の講師をする一方で、私は個人のお客様のライフプラン作成業務を行っております。その中で、企業型確定拠出年金の話題になると多くの方が制度を理解せずに加入している現状を目の当たりにします。特に受給については定年退職直前に手続きの案内を受取り、あまり考える事無く一時金を選択する傾向が大きいようです。

 

確定拠出年金の老齢給付金の受取方法は規約で定められており

①年金

②一時金

③一時金+年金

の3通りの受取方法を選択できるケースが一般的です。

2020年3月に公表された確定拠出年金統計資料の中での受給金額ベースでの割合で一時金での受給が95%に達しています。

しかしながら、場合によっては年金を選択した方がお得に受給できるケースもあります。

 

受給する際の税制では、一時金で受給する時には退職所得控除、年金で受給する時には公的年金等控除を利用する事が可能です。但し、所得税法でそれぞれ定められた細かいルールがあり、それぞれの控除が利用できない場合もありますので注意が必要です。

 

先日、あと4年ほどで定年退職を迎える女性のライフプランを考えていた時のお話です。女性は、確定拠出年金の退職後の手続きについては説明があったかどうかわからず定年退職になったら自動的に一時金で受給するものと思っていらっしゃいました。

規約を確認するとともに、ご自身の資産の状況、何歳まで仕事をする予定なのか、これまでの退職所得控除の利用状況、公的年金の受給予想額等確認しながら、老後のライフプランを作成する中で、確定拠出年金の資産は直ぐに換金する必要がない事がわかり、定年退職後も可能な限り運用指図者として資産の運用を継続する事になりました。

 

確定拠出年金の受給額はお一人お一人異なります。ご自身の資産状況も資金を必要とする時期も千差万別。

確定拠出年金の老齢給付金の受給時のお得な税制等を知り、40代後半頃から徐々にご自身のライフプランを考え、受給の適切な時期と受給方法を検討する事も大切です。受給時期に向けて運用商品の変更等、受給に向けたプランを考える事で今まで大切に育てた資産をさらに活かす事につながります。

 

確定拠出年金が導入されて20年の年月が過ぎようとしています。

2020年3月末の年代別加入者割合は40~49歳が31.2%、50~59歳が24.7%と40歳~59歳までの加入者割合は全体の50%を超えています。

確定拠出年金の継続教育研修は資産運用面ばかりに目が行きがちですが、加入者の年齢に合わせて、そろそろ老後のライフプランを継続教育に取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

個人が自己責任で運用や受給の決定をしなければならない確定拠出型年金。

老後の生活は自分自身で守っていくというスタンスを老後のライフプランの継続研修の中で考え、もはや昔のように会社が何から何まで守ってくれる時代は終わっていることを従業員の皆様に再認識いただく良い機会になるとも考えます。

 

私共はファイナンシャルプランナーが在籍しており確定拠出年金を考慮した老後ライフプランについての研修も承っております。

                                                            文責:森村梨果香

 

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