企業年金の現場から R3.3

早期退職の検討〜Aさんの事例のご紹介

57歳を迎え管理職から専門職へ転換するAさんの相談事例をご紹介します。

Aさんは短命の家系、早く会社を辞め元気なうちに旅や趣味を楽しみ、「のんびり生活」をしたいという希望をもっています。さりながら退職後も50歳代では200〜300万円の収入は確保し、60歳から年金生活に入りたいが問題ないかという相談です。

◆専門職へ移行後の会社処遇

1.給与は40万円から35万円に約15%減額する〜これは賞与に反映され年収は約15%減少する

2.60歳時の退職金は2900万円であるが、もし早期退職するなら57歳時の退職金2600万円に1000万円上乗せし、3600万円支給する

◆検討テーマは3点

1.老後資金が不足しないか?老後資金は何歳までもつか?

2.退職金1000万円の上乗せは魅力的だが本当に得なのか?

3.年金を5年繰上げ受給〜30%減額されるが損得勘定は?分岐点は何歳か?

◆検討内容

1.Aさんは年間収支をしっかり管理していて使途不明金が年間10万円を越さないしっかり者でした〜これは凄いことです。海外旅行等を組み込まなければ80歳時点で約2000万円の老後資金が残り、「のんびり生活」ができるという試算結果でした。

2.57歳時と60歳定年時の退職金手取り額を比較してみました。57歳時の退職金の税金(※)は239万円、手取り額は約3361万円、60歳定年退職の税金は96万円で手取り額は2804万円、会社は1000万円の増額と言いますが、実質は定年退職分より557万円の増額にしかなりません。

3.年金の繰上げ受給は基礎年金も厚生年金も月当り0.5%の減額、5年間で30%の減額になります。Aさんの場合65歳から243万円貰えるのが170万円になってしまいます。

その減額は65歳になっても元に戻らず、生涯にわたって減額のままです。繰上げ受給した5年分の年金受給額が65歳以降の減額分の何年分にあたるか計算するとA氏の場合は約11.6年分となります、つまり76歳までは得ですが、77歳以上長生きをする場合は損をします。

 

Aさんはまだ結論を出していませんが、私は定年退職まで頑張るよう願っています。

この事例に限らず老後資金に不安をもつ方はたくさんいると思いますが、客観的第三者であるFPの活用〜企業年金相談センターに相談することをお奨めします。

 

※20年以上勤務者の退職金に対する税金:(退職金−退職所得控除額)÷2×税率

退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)

以上

                                    文責:仁科 眞雄

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