企業年金の現場から H27.12

高すぎる信託報酬は見直しを

 

 4月3日に、「確定拠出年金(DC)法等の一部を改正する法律案」が通常国会に提出され、衆議院を通過しました。現在は次期国会の参議院での審議結果を待つ段階にあります。

この法案には、DC制度の様々な改革内容が含まれていますが、その中に、「事業主は、委託する運営管理機関を5年ごとに評価・検討し、必要に応じて変更すること等を努力義務とする」という内容が盛り込まれました。

 

 DC制度では、運用は従業員に任されていますが、会社も金融機関任せにするのではなく、その運営管理業務をしっかり評価し改善を求める努めがあると規定するものです。

 DCの運用に大きな影響を与えるのは、運用商品です。運用商品として主に選択される投資信託には、インデックス型(=パッシブ型)とアクティブ型の分類があります。

投資信託の構成銘柄や構成比率を適時変更して、より高いパフォーマンス(≒利回り)を追及するアクティブ型は、手数がかかることから、信託報酬(≒手数料)が高く設定されることが一般的です。しかし、その割にはパフォーマンスがインデックス型に及ばないケースが多いと報告されています。

 

 例えば、ある会社のDCに採用されている外国株式型の投資信託は、アクティブ型で信託報酬が約1.7%です。一方、別の会社の採用した外国株式型の投資信託はインデックス型で、信託報酬は約0.3%でした。この両者の投資信託の約13年間の運用成績を追ったところ、当初預けた100万円がアクティブ型は約160万円に、インデックス型は約200万円になることが分かりました。

 アクティブ型、インデックス型ともに増えているのですが、両者の間には40万円もの差がついてしまいました。アクティブ型は常によりよいパフォーマンスを追及しているのですが、場合により間違った判断で悪い結果を招くこともあり、また、年率1.4%の信託報酬の差が大きな障害となって、インデックス型に及ばない結果となってしまった訳です。

 DC制度を導入されている企業の方々には、ご自分の会社の運用商品を確認してみることをお勧めします。多くの金融機関が、DC用のインデックス型投資信託として信託報酬が0.2%~0.3%のものを用意しています。もしも、日本債券、日本株式、外国債券、外国株式などDCで良く利用される投資信託で、0.5%以上の信託報酬のものが運用商品に含まれていたら、運営管理機関に相談して、入れ替えを依頼するのも一案です。たかが、0.1%や0.2%の差くらいと思えても、30年、40年の長期運用では大きな差につながります。

 

 公的年金の支給率引き下げを進めざるを得ない国の財政状況の中、各企業においても、DC制度の効率を高める対策が期待されています。   

川上 壮太

 

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