企業年金の現場から H27.06

厚生年金基金存続への疑問

 昭和41年、厚生年金基金(以下基金という)は国の年金制度(老齢厚生年金(再評価部分を除く))を引継ぐ世界に例をみない形でスタートした。そして高度経済成長に支えられ、基金の年金資産運用利回り(以下単に運用利回りという)は予定利率を上回り、基金運営は順風満帆に推移していた。

 しかし昭和62年ブラックマンデーを機に予定利率の確保が難しくなりその運営は陰り始めた。それでも国の後押しがあって、平成9年には基金数は1874基金、加入員数は1225万人にまで膨れ上がった。

 この年は拓銀、山一が相次いで破たんした年でもある。この時期を境に基金の運用利回りは乱高下し、予定利率を下回るどころか水面下に喘ぐ事態になった。この結果、基金財政は悪化し息途絶えた感を呈したが、国は延命措置を施すことに専念した。その後、平成14年以降、単独型・連合型基金は次々と堰を切ったように基金制度から離脱し、確定給付企業年金制度に移行又は解散して確定拠出年金制度を導入した。総合型基金はその多くが解散条件の高いハードルを越せないまま基金制度に取り残された。

  

 政府は、このままでは基金沈没の虞ありとして、平成25年に厚生年金保険法(以下厚年法という)を大改正(第9章「厚生年金基金及び企業年金連会」を削除)し、翌26年4月に施行した。この結果、平成27年3月末現在で基金数は444基金、このうち厚労省から解散又は代行返上の内諾を得た基金数は383基金となっている。残りの61基金のうち組織決定はしていないが解散又は代行返上の意向を示しているのは28基金、存続予定は20基金、そして方針未定は13基金となっている(厚労省調べ)。この方針未定基金はおそらく存続しないであろう。

 存続予定の20基金は旧厚年法の下で生きていくわけであるが、平成31年3月までに最低責任準備金の1.5倍又は最低積立基準額に見合う年金資産を確保しなければならない。ここ数年は運用環境もよく年金資産も順調に推移しているが、過去の例をみるまでもなく、将来に激変なしとは言えない。

 また、25年改正法の施行により存続基金の事務作業が煩雑になったことも見落としてはなるまい。従来は従業員が10年未満で退職したときは年金記録及び年金現価相当額を企業年金連合会に移換することによって年金給付責任を免れていたが、25年改正法施行後は退職者の基本年金(老齢厚生年金代行部分及びプラスアルファ)に係る一切の管理を自基金で行い、1か月以上在籍した者について終身にわたって給付義務が課せられる。存続基金は大規模であろうからこの業務負担も看過できない。職員の悲鳴が聞こえてくるようである。

 厚労省と企業年金連合会とが二重行政といわれて久しいが、これに存続基金が加わり、三重行政となる。簡素化どころか一層煩雑且つムダな体制となる。気がかりである。

 

(近藤嘉正) 

 

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