企業年金の現場から H27.04

厚生年金基金の2月の代議員会の動向と企業の対応策

 

 この2月に入って、各基金では一斉に代議員会を開き、代行返上や解散の方針を議決し、その具体化について加入企業に説明を始めています。

 大きな特徴として、従来代行返上を目指していた基金の中から解散の方針に転向したり、加入企業の反対が強いため、解散やむなしということを暗示するような基金も出てきました。代行返上を目指す基金は、その権利、義務をDBに移行しますが、解散の場合は基金事務局が後継企業年金の設立を計画し、そこへの参加を推奨していることが多く、これをどう受け止めるべきかも1つの課題でしょう。

 以下に、基金事務局の説明、提案をチェックするポイントを挙げてみましょう。

 

まず代行返上基金について、

(1)計画の基礎として、加入者数の減少を想定していないことが多い。

  多くの基金では、加入者数がここ数年、年平均1~2%の割合で減少しており、それに今回の、代行返上に反対する企業の基金からの離反も考えると、5~6年後には10~15%の加入員減少が見込まれ、代行返上後にできた新DBの財政基盤が瓦解する可能性があります。

 

(2)3%という高い予定利率を前提としているところもあります。

  今なお予定利率が5.5%のままになっている基金もあり、これを一気に昨今の2%以下の水準まで下げると、次のような問題が起こります。

  一般に予定利率を1%下げると、責任準備金(したがって掛金も)20%強上昇するといわれている。ですから、5.5%から2.0%に3.5%下げると、掛金は1.8~2倍ぐらいになります。これではとても受け入れられないので、「現状並みの掛金水準」を維持すると、給付額を、1/1.8~1/2.0=0.50~0.55まで、つまり50%程度減額しなければならないことになります。「給付半減」というのも言いづらいので、予定利率を3%ぐらいに設定して、「給付減額は30%台」ということにしたいというのがお家の事情のようです。

 

(3)特例選択一時金の請求ラッシュはないか?

  基金の受給者が給付減額の要請を受けたときそれを承知できない受給者は、将来給付予定の年金を一時金に換算して受け取ることができます。こういう一時金請求のラッシュが起こると、新DBの資産は大きく目減りします。ただ過去の例では、受給者のラッシュの今迄に聞いた最大のものは7%程度であったようです。しかし、現在のように厚生年金基金制度そのものが廃止に近い状況になると、また違った結果になるかもしれません。

  各基金の説明書はこのことに触れていません。触れているケースとしては、こういうおそれがあるので受給者の給付減額はやらないという基金もあります。当然その負担は加入者とその企業にかかります。ただでさえ受給者の権利保護が厚い代行返上で、さらに加入者とのバランスが崩れることになります。

 

 一方解散の場合、

(4)代行部分の準備金を超える残余財産がある場合、これは受給者、加入員に分配されますが、分配方法は規約で決められているか、この際改めて決定するのですが、しばしば受給者に厚く、加入員にうすい基金があります。こういうことは適度のバランスで考えるほかないのですから、その観点から事務局の説明を求める必要がありましょう。

 

(5)基金事務局が主宰する継続基金をどう評価するか。

  解散の後、基金事務局が、継続基金のような形の制度を作り、「業界の団結」とか、「継続性の維持」といったうたい文句で加入を勧誘してくることが多いのですが、これは厚生年金基金の積立不足を作って解散に至らしめた当の責任者が薦める純然たる私設基金であり、そういうものとして信用力を評価すべきでしょう。

 

(6)この機会に、貴社のご事情と経営方針に適した退職金制度の設定を。

  厚生年金基金の代替制度は、貴社の退職金制度全体の一部として、適切な選択をすべきでしょう。たとえば、従来DCを設定していたのなら、この際、60歳にならなくても退職時に支給できるという労務政策的見地からDBを選ぶとか、従来DBでやってきたのであれば、代替部分は退職給付債務が生じないDCを選んで財務的メリットを享受するとか、独立した企業としての経営的判断から決定されてはどうでしょうか。しかもこれら企業年金は信用できる金融機関を貴社が選んで、中間介在者なしで直接取引するという点でもリスク回避的なものです。

 

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