企業年金の現場から H27.02
平成27年度税制改正大綱に見る企業年金制度の変革
前月号で確定拠出年金を中心に企業年金が改善される方向で検討されている情報をお知らせしましたが、12月30日に与党の平成27年度税制改正大綱が決定され、そこに掲載される企業年金関係の改正事項が1月16日の社会保障審議会企業年金部会で明らかにされました。その主たるものは、個人型確定拠出年金(DC)の改善、拡充に関するものなど、下記のような税制改正です。
1.個人型DCの改善、拡充
①現在DCに加入できない(ⅰ)3号被保険者(専業主婦)、(ⅱ)2号被保険者
のうちの公務員等の共済年金被保険者、(ⅲ)DCを実施していない企業のDB加入者が個人型DCに加入できることになります。
②企業型DCの加入者も、(ⅰ)マッチング拠出がないこと、(ⅱ)企業型DCの規約に定めることを条件に個人型DCに加入できることとなり、この結果、いままで伸びが小さかった個人型DCはその対象をすべての国民年金被保険者に広められることとなります。
③これら個人型DCに適用される拠出額の限度は下表のとおりです。
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〈加 入 資 格〉 〈拠出限度額〉
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・従来からの加入資格者
1号被保険者(自営業者〉 81.6万円
2号被保険者(サラリーマン)で企業年金の適用がない場合 27.6万円
・新規加入資格者
2号被保険者(サラリーマン)でDBが適用されている場合 14.4万円
2号被保険者(サラリーマン)でDBとDCが適用されている場合 14.4万円
2号被保険者(サラリーマン)でDCが適用されている場合 24万円
2号被保険者で公務員等共済年金が適用されている場合 14.4万円
3号被保険者(サラリーマンや公務員の妻等)の場合 27.6万円
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④小規模企業(100名以下)の事業主の個人型DCへの拠出
本来、もっぱら個人が拠出するはずの「個人型DC」に、小規模事業主の拠出を認めることとし、その掛金について、(ⅰ)事業主掛金の損金算入、(ⅱ)個人所得としない、(ⅲ)積立金に特別法人税を課税する(但し、平成29年3月末までは課税を凍結している)といった税制上の扱いを受けることとなります。
2.ポータビリティーの拡充
次のような資産移換が認められ、企業間移転等の際の便宜が図られます。
①現在では認められていないDCからDBへの資産移換が可能となります。
②合併等に伴う企業型DC、DB、中退共間での資産移換が可能になります。
③企業が中小企業の基準を超えて大きくなった場合に、中退共からDCへの移管が可能となります。(平成25年12月24日閣議決定で基本方針決定済み)
3.年金課税全体の見直し
年金への課税については、各年金の制度全般の在り方をも展望して、今後の課題とされています。一番問題になるのが、DCの免税の条件として、税務当局は60歳まで給付を受けないという、一般の投資、貯蓄と区分する制約を課していることです。諸外国ではペナルティー等、様々な条件付きでこの制約を緩めていますし、DCとDBのイコール・フッティングという年金制度のバランスからも何らかの工夫が期待されるところです。