企業年金の現場から H27.01

確定拠出年金の新しい展望

 

 明けましておめでとうございます。

 新たな2015年は、私的年金制度である企業年金制度が飛躍する年になりそうです。老後所得保障の柱である公的年金制度は、少子高齢化が進む中で給付水準を引き下げざるを得ず、厚生労働省は公的年金制度を補完する企業年金制度を使いやすくして、公的年金と組み合わせて老後の所得確保を図るべく制度改正を行う段取りを進めています。いわば企業年金が、公的年金に準ずる制度へと格上げされる法改正が今年の通常国会で取り上げられる見通しです。

 

  3年前のAIJ事件は、既に制度疲労を起こしていた厚生年金基金を直撃し、多くの代行割れ基金を白日の下にさらす結果となり、厚生年金基金を廃止へと向かわせることになりました。この厚生年金基金の廃止で、中堅・中小企業の、受給者・待期者・加入員を合わせると約1000万人が影響を受けることになります。また、確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)の2制度は、成立後10年が経過し働き方の多様化等社会情勢の変化もあり、制度の見直しの時期がきているといわれております。

 

  企業年金制度を審議する、社会保障審議会企業年金部会は、一昨年から十数回にわたって審議を重ね、昨年末の12月25日に開催された部会に、「現行制度の改善について」という文書で、現行企業年金制度の問題点などについての厚生労働省の認識が示され、概ね了承が得られました。しかし、この論点は手続きの簡素化や手数料の開示等についての問題点を示した程度で、制度自体の改善について、関係者が期待する具体案の提示には至りませんでしたが、一歩前進の内容を含むものと評価

できると思います。

 

◆企業年金制度の見直しを期待する主な事項と実現の可能性について

 ・全国民のDC(個人型、企業型)への加入を可能とする問題 ⇒ 加入者の継続性の確保、公的年金に準ずる制度への視点から実現する方向へ。

 ・DCのマッチィング拠出の拡大⇒公的年金に準ずる制度への視点から実現の方向へ。

 ・DCの掛金の上限を「定額」から「給与の定率」に変更し掛金額の実質拡大 ⇒ 公的年 金に準ずる制度への視点から実現の方向へ。

 ・DCの退職による途中引出 ⇒ 諸外国では条件付き途中引出しを容認していることから実現の可能性も(日本のDCは退職金から移行した側面があり実現が望まれる)。

 ・DCの手数料+信託報酬の低廉化 ⇒ 諸外国に比べ信託報酬等が高価であり加入者等の負担軽減のため、何らかの形で低廉化の推進が必要。

 ・DCの独立した外部機関等による投資教育 ⇒ 投資教育負担の軽減策として推進か。

 ・DBの積立不足が発生した場合の追加拠出の上限を撤廃 ⇒ DB制度推進のため実現の方向へ。

 ・総合型DB掛金未納企業の給付減額 ⇒ 総合型DB活用の必要性から実現の可能性。

 

 企業年金制度への加入者は、ほぼ毎年減少し2013年には1655万人となり、2000年に比べ500万人以上の減少となっていました。この流れを止め、企業年金制度の規制を緩和し、企業や従業員が魅力を感じる制度に改革することで、早期に加入者数を従前の水準である2200万人まで回復させたい、というのが行政当局の当面の願望だろうと思われます。

(砂田昌次郎)

 

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