企業年金の現場から R5.11

2024年 新NISA開始! みなさまの準備はお済みでしょうか?

2023年も残すところ2か月。

2024年には、2014年1月にスタートした個人投資家のための税制優遇制度(NISA)が様々な変遷を経てリニューアルされます(以下、「新NISA」といいます)。例えば、投資枠や非課税保有期間が拡充され利用者の利便性が高まることが新NISAに期待されています。

 

今回は、NISAをこれから始めてみたいとお考えの方及びこれまで利用されてきた方それぞれに向けて、制度の特徴を理解していただけるよう整理し、年内に検討・準備しておくべき事項をまとめてみます。

 

1 NISA制度の概要

(1)概要

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、売却時の利益や受け取った配当金に対して約20%の税金がかかります。NISA制度は、毎年一定金額の範囲内でNISA(非課税口座)を利用し金融商品を購入した場合、これらの税金がかからなくなる制度です。取引可能なNISA口座は一人一口座、口座開設年の1月1日時点で18歳以上の日本居住者が対象者となります。

 

(2)新NISAの特徴

拡充された主な事項は以下のとおりです。

① つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能

現行制度では、つみたてNISAと一般NISAは選択制(併用不可)

・投資対象商品

つみたて投資枠:長期積立・分散投資に適した一定の投資信託(現行つみたてNISA対象商品と同じ)

成長投資枠:上場株式・投資信託等 (除外商品 整理管理銘柄、毎月分配型投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定投資信託等)

 

② 投資枠の拡充

・年間投資枠

最大360万円 (つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)

現行制度では、つみたてNISA 40万円/年 一般NISA 120万円/年

・非課税保有限度額(生涯投資枠) 

総額 1,800万円(うち、成長投資枠は1,200万円)

限度額総枠は簿価残高方式で管理されます。例えば、生涯投資枠1,800万円上限まで商品を保有している場合であっても、一部商品を売却し、その商品の簿価分の再利用(新たに金融商品購入)が可能となります。

 

③ 非課税保有期間 無期限

現行制度では、つみたてNISA(最長20年間) 一般NISA(最長5年間)の制限あり。

 

2 準備事項

(1)一般NISA つみたてNISAに残高がある場合

① 現行口座のある金融機関で新NISA口座は自動的に開設されます(手続不要)。

・現行口座と新NISAは別口座として管理

2023年非課税投資枠の未利用枠がある場合は年内最終営業日まで使用できます。

なお、約定日が年内であっても受渡日が翌年になる場合は、2023年非課税投資枠の利用となりません。受渡日は約定日から起算して数営業日目等商品ごとに異なりますのでご注意ください。

② 新NISAを別の金融機関で始めたい場合、手続きが必要です。

現行口座のある金融機関へ申請し、当該金融機関が作成・交付する「通知書」を必要書類と併せて新たに口座開設を希望する金融機関へ提出します。2024年1月1日以降、新NISA口座開設されます。なお、2023年以前のNISA残高は移管されません。

 

(2)はじめてNISA口座を開設する場合

運用商品、運用開始後のサポート体制等を吟味し、口座開設金融機関を選定します。なお、申込方法(オンライン、郵送、店頭等)により口座開設までの期間は異なります。

・必要書類:①マイナンバーカード(個人カードまたは通知カード)②本人確認書類

 

3 注意すべき事項

 新NISAを機に従前のサービスに加えて複合的なメリットを提案する企業の新規参入も見受けられます。また、投資信託購入によりポイント付与、クレジットカードで積立可能、投信の買付にポイント利用等、利便性の差別化を図る金融機関も増えてきました。

 他方、一部の偏った情報発信等、本来の制度利用の目的を歪めかねない情報が散見されます。「金融商品を保有すること=投資」を始めるにあたり、投資の目的、目標額、お金が必要なタイミング等を各人が明確にすることが、中長期の資産形成に取り組む大切な第一歩です。生涯投資枠1,800万円を使い切ることが目的ではありません。新NISAは資産形成を効率的に後押しする手段の一つにすぎません。

 NISA制度は、将来の年金受給を補完するとともに、若年期、壮年期の人生を豊かにする機能が期待されています。

 制度の特徴を正しく理解し、各人のライフプランにあわせた使い方を考える機会といえるでしょう。