確定給付年金制度

Q1.確定給付企業年金の種類の概要を説明して下さい
A1.確定給付企業年金法に基づいた制度で、企業が年金規約に基づき外部で資金を管理・運用し、給付を行う「規約型企業年金」と母体企業とは別の法人格を持った基金を設立し、基金において資金を管理・運用し、給付を行う「基金型企業年金」の2種類があります。
また、確定給付企業年金の分類としては、DB(確定給付型)、CBプラン(キャッシュ・バランス型)、及びリスク分担型の3つがあります。

 

Q2.確定給付企業年金(DB)の規約型と基金型の違いを教えて下さい

A2. 確定給付企業年金制度には、設立形態の異なる2つのタイプ「企業年金基金型」と「企業年金規約型」の制度があります。

【基金型】は、同種同業の企業の事業主又は単独企業か系列企業の事業主が従業員の同意を得て、

加入企業とは別に「企業年金基金」という法人を設立(厚生労働省の認可法人)、制度内容を定めた年金規約に基づき、年金資産を管理・運用し、

給付を行う企業年金です。

制度運営は、重要事項の意思決定を代議員会、業務の意思決定を理事会、運営は理事や事務局が中心になって行っています(規約型との大きな相違点)。

尚、信託会社や生命保険会社等に年金資産と年金債務の将来予測・年金財政と年金資産運用に関するコンサルティング業務等を委託することができます。

※基金型は、厚生年金基金代行返上の受け皿が大部分です。

 

       【規約型】は、単独企業又は系列企業の事業主が主体となり、事業主と従業員が定めた年金規約に基づき実施する制度です。

    制度運営は、事業主が意思決定、管理部門(人事部・経理部等)が運営の中心になって行っています。

    尚、事業主は信託会社や生命保険会社等と資産管理運用契約を締結し、母体企業の外で年金資産を管理・運用し、年金給付を行います

        (生命保険会社・信託銀行が運用から給付までの業務を担当します)。※規約型は税制適格退職年金制度からの移行が多いです。

 

 

Q3.基金だよりの「財政検証」とはなんですか?

A2:毎年の決算結果を受けて、年金財政の健全性(積立金の額が基準を満たしているか)を検証することです。基準を満たさない場合は、

必要な措置を講じることになります。

検証には、①「継続基準の財政検証」、②「非継続基準の財政検証」、③「積立上限額に係る財政検証」があります。 

①継続基準は企業年金を今後も継続するという観点から行うもので、責任準備金の額に見合う積立金(純資産)の額が保有できている

かどうかを検証します。

②非継続基準は企業年金が今年度末解散・終了した場合であっても、過去の加入期間に応じて発生している、または発生しているとみなさ

れる給付(最低保全給付)の現価(最低積立基準額)に見合う積立金(純資産)の額が保有されているかどうかを検証します。

※①の継続基準又は②の非継続基準に抵触した場合は掛金の見直しが必要です。

③「積立上限額に係る財政検証」は、積立金(純資産)の額が必要以上の水準になっていないかどうかを検証します。積立金(純資産)の額が

積立上限額※を超えている場合には、限度超過が解消されるまでの間、掛金を減らしたり、掛金の徴収を止めたりします。

    ※積立上限額は、数理債務または最低積立基準額のいずれか大きい額に1.5を乗じた額です。

 

 

Q4.厚生労働省が企業年金の監査を実施していると聞きましたが指摘事項を教えて下さい?

A4.確定給付企業年金監査報告書(平成29年度報告書)の重要と思われる指摘事項は下記の通りです。

 ①規約管理:規約の変更であって、軽微なものをした時は、遅滞無く届出をすること。

    ②業務周知:業務の概況について、加入者に周知する事。

③給付:加入者の資格を喪失した者に対し、脱退一時金相当額の移換に関して必要な事項を説明すること

④資産運用:資産運用については、運用の基本方針及び整合的な運用指針を策定し、当該基本方針等に沿って運用すること。

⑤代議員及び理事(基金型):理事長代理については、あらかじめ理事長が指定すること。

⑥監事監査(基金型):監事は、事業年度当初、監査の実施計画を立て、これを理事長に通知する事。

⑦福祉事業(基金型):加入者等の福利及び厚生に関する事業については、規約で定めるところにより行う事。

⑧個人情報保護:取り扱う個人データーの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データーの安全管理のために必要かつ適切な措置を

講ずること。

                       

尚、厚生労働省は「確定給付企業年金 事業運営・事務執行点検シート(基金型)」を発行・公表しています。この点検シートは、確定給付

企業年金の実施にあたり、確認しておくべき事項について纏めたものです(基金の理事・監事・代議員・事務局用)。

 

 Q5. キャッシュバランスプラン(CB)は、退職給付債務は発生しますか(2019年2月)

 A5.発生します。
   退職給付債務は、退職時の給付額のうち、期末時点までに発生していると見込まれる部分について、一定の割引率により割戻した金額です。
  キャッシュバランスプランは、従業員ごとに仮想の個人口座を設定し、ここに規約に基づく掛金を拠出し(持分付与額)、

    指標に基づく利息(利息付与額)を加えた累計額が、将来の年金や一時金の原資となります。
    一般的な確定給付年金制度(DB)と異なり、この指標に国債利回りなどを採用し、市場金利の動向に連動させることが出来ます。
    金利が低下し割引率が下がれば退職給付債務は増加しますが、一方で指標の低下による利息の減少により給付見込み額も下がるので、

    結果として退職給付債務の増加を抑えることができます。
    固定された予定利率で運用される通常の確定給付年金制度と比べて、積立不足の発生を抑制出来る利点があり、

    近年は確定給付制度の主流となりつつあります。
    また、複数の企業が参加する「総合型のキャッシュバランスプラン」も普及し始めています。総合型の場合、

   「複数事業主の例外処理」が適用され、退職給付債務を計上する必要がなくなります。
    退職給付債務を発生させたくなければ、総合型のキャッシュバランスプランに加入するという選択肢があります。

Q6.キャッシュバランスプラン(CB)でも、確定拠出年金制度(DC)と同様に選択制を導入出来ますか(2019年2月)
A6.選択制の導入は可能です。
  選択制DCは、従業員個々の選択により、給与または賞与の一部を掛金として拠出した場合、拠出した掛金は給与または賞与に含まれないので、

  所得税や住民税、社会保険料が減少する効果があります。(社会保険料については企業側も減少し、収益に寄与します)

  ただし、厚生年金保険料の掛金が減少した場合、将来受取る年金額も減少することに、留意する必要があります。
  キャッシュバランスプランでも、確定拠出年金と同様に選択制を導入することができます。運用を従業員ではなく、

  企業が行うことが異なる点です。
  確定拠出年金の場合、従業員が運用を行うので、失敗して掛金累計額を下回る元本割れの可能性があります。
  一方、キャッシュバランスプランの場合、運用は企業が行い、利息を付与する指標は0を下回れませんので、

  従業員は掛金累計額以上を受け取ることができます。
  企業には、運用の負担が生じますが、生命保険会社の一般勘定を活用することにより、安定的な運用を目指すことも出来ます。

 

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