企業年金の現場から R1.5

確定拠出年金(DC)の投資教育を考える

 

私どもは退職金・企業年金制度の改革や導入のお手伝いをしておりますが、確定拠出年金(DC)を導入された企業様から、継続投資教育のご注文もいただいております。

先日行った継続投資教育の際に、若い参加者の方から「2008年に起きたリーマン・ショックのようなことがまたあったら、株式に資金を集中して大儲けをしたい」というご発言がありました。このことについて考えてみたいと思います。

 

1.金融危機の谷底を見極めるのは、とても困難

継続投資教育の際は過去の歴史として学びますので、客観的に判断できますが、その渦中にあった際にはどういう状況なのか、わからないでしょう。

例えば、日本でも大型倒産が相次いだ金融危機が起きました。1996年11月に三洋証券が破綻、北海道拓殖銀行、山一證券が姿を消し、翌年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行と破綻は続きました。この連鎖に何時歯止めが掛かるのか、どこが底なのか、この時に予測できた人は非常に少ないと思います。

 

2.投資信託の換金には時間が掛かる

株式の場合、絶えず市場を監視し常時取引を行うデイトレーダーと呼ばれる人が居ます。また、プログラムを使って高速取引を行っている金融機関も存在します。

しかし、確定拠出年金では直接に株式に投資することはできず、投資信託を購入することになります。投資信託の場合、売却できるのは最短でも4営業日目となり、当日の締め切りに間に合わなかったり、外国資産や新興国資産に投資している場合は、さらに日数が必要となります。換金後に新しい投資信託を購入したとしても、すでにタイミングを逸している可能性があり、「大儲け」を目論むには投資信託は適していません。

 

3.確定拠出年金で長期投資とドルコスト平均法を実践

債券に比べると株式は大きく上下することがあり、一喜一憂しがちです。

確かに、リーマン・ショックの時などは大きく値下がりしました。

しかし、例えば1969年12月から2018年12月の約50年という長期で見た場合、外国株式は年平均7.0%、国内株式は6.1%の実績を示しており、十分な収益を上げることが出来ています。

また、確定拠出年金は毎回一定額の投資を続けるので、価格が下がっているときには多く、上がっているときには少ない数量を買い付けることになり、結果的に平均の購入単価が下がる、ドルコスト平均法と呼ばれる有利な投資方法を実践出来ることになります。

 

確定拠出年金は、老後を支える大切な資金です。数年間で資産を数倍にしようとするような、投機的な運用には向いていません。

市場の変動に一喜一憂せず、長い目で資産作りに励むことが、結果的に大きな成果をもたらしてくれるのです。

 

田中 均

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