企業年金の現場から H32.2

働き方改革関連法への対応準備は進んでいますか

 

働き方改革関連法が昨年6月に成立し、関連法規の改正部分がいよいよ4月1日より(一部例外あり)すべての会社にて多かれ少なかれ適用されることにより、各会社でその対応と検討が必要になります。
法改正の内容は次のとおりですが、皆さんの会社で関係する・適用される部分には十分に注意しておく必要があります。
今回の法改正は大きく分けて、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関らない公正な待遇の確保」(同一労働同一賃金ルール)の2つの分野に分かれます。

<1>「労働時間法制の見直し」関係分野は労基法、安衛法等の改正で、次の内容となっています。
①残業時間の上限規制
時間外労働の管理方法の見直し、新しい書式での36協定への対応等が必要になります。
②勤務間インターバル制度の導入促進(努力義務)
③年次有給休暇の年間5日間の取得(企業に義務付け)
就業規則等への規定の盛り込みと年次有給休暇の管理体制の整備が必要となることがあります。
④中小企業の月間60時間超の残業の割増賃金率引き上げ(大企業は既に実施済)
⑤労働時間の客観的な把握(企業に義務付け)
⑥「フレックスタイム制」の拡充
⑦「高度プロフェッショナル制度」を創設
⑧産業医・産業保健機能の強化

①の中小企業への適用は2020年4月1日、残業の少なくない業種・企業などでは対応が難しいところが出てくると考えられます。
③は従業員がいれば、必ず適用になる見直しでどの企業でも必ず今年4月以降対応が必要です。
④は既に大企業には適用済み、中小企業は2023年4月1日より現行25%の割増率が50%へ。
 ③と①は今回労基法で規定されており、違反には罰則が適用されます。

<2>「雇用形態に関らない公正な待遇の確保」の関係分野ではパートタイム・有期労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正により次のことを決めており、大企業には2020年4月より、中小企業には2021年4月より適用されます。
①不合理な待遇差をなくすための規定の整備
 (イ)パートタイム労働者・有期雇用労働者
 (ロ)派遣労働者
  いわゆる 「同一労働同一賃金」ルールの導入で同一企業内の正社員とパート・有期雇用社員との「均衡待遇」、「均等待遇」が求められます。
定年後再雇用の対象者等も「有期雇用労働者」なので対象となります。
昨年末に出された「ガイド・ライン」案でも、賃金項目ごとに細かい取組の方向性が示されていますが、ごく普通の企業でも諸手当の見直し等が必要になり、賃金規程の整備、パートの人事賃金制度の見直し等が必要になることも考えられます。
②労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
 労働条件通知書、雇用契約の整備等が必要になります。
③行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続き(ADR)の規定の整備

法改正の内容は上述の通り盛り沢山な内容になっていますが、法改正の内容を認識せずに違法状態となり、引き起こされる不用意な労務トラブルを未然に防ぐ為にも、まだ対応を検討準備されていない会社では必要な部分の対応をタイムリーに検討することをお勧めします。

上記の説明の繰り返しになりますが、もう一度確認しておくと多くの企業で対応が必要となると思われる項目は次の通りです。

●年次有給休暇の時季指定(すべての企業で2019年4月から)
●時間外労働の上限規制<月45時間、年間360時間が原則>
(大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から)
●正社員とパートタイマー・有期雇用労働者との「均衡待遇」「均等待遇」
<いわゆる「同一労働同一賃金ルール」>
(大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から。)

企業年金相談センターでも、人事労務の専門家がこれらに対応するための企業からの相談に応じていますので、
詳しい説明が聞きたい、対応について相談したい等ご希望があればご連絡ください。
                                             

                                           (鼓 康男)

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