企業年金の現場から H31.1

ある中堅企業の継続投資教育のご紹介

 

2007年1月、適格退職年金をDC制度に移行させた約300人規模の中堅会社での継続投資教育です。適格年金からの移換金額は595百万円、導入後2008年にリーマンショックが起り、担当部長は辛い思いをされたと思われますが、継続投資教育に熱心に取組んで現在の資産残高はマッチング拠出を含め767百万円(内移換金残高294百万円)に増加しています。
リーマンショック前の2007年10月末の元本確保型残高は422百万円(全資産の70%)でしたが、2018年9月末の同残高は394百万円(全体の51%)に減少、投資信託への資産配分が増加しました。国内株式投信が21%(+9%)、外国株式投信は9%(+6%)、バランス型が13%(+3%)と株式投信の比率が43%(+18%)と増加し、継続投資教育の成果が数字に表れていると思われます。
この継続投資教育は人事総務部が主催、外部の中立的なDCプランナー・ファイナンシャルプランナーを講師に招聘して行われます。毎年11〜12月に開催し、初級・中級・上級のクラス別に各2〜3回、就業時間内に各1.5時間実施されます。

会社の営業拠点は首都圏に数か所あり、中部・近畿にも営業所があるので、本社以外の店舗ではTV会議システムを使って行われます。
海外にも香港・シンガポール・米国・欧州に営業拠点がありますが、海外駐在者には実施されていません。新卒・中途入社社員は受講が義務付けられています。


初年度は初級を、翌年は中級、翌々年は上級を受講するのが原則です。海外帰任者及び参加希望者は何回でも任意に受講でき、毎年40人前後が受講します。
 初級・中級・上級の各クラスとも自己のアセットアロケーション(資産配分)をもとに「リターンとリスク」を実際に試算し、会社が目標とする資産(想定利率)を確保できるかを確認します。元本確保型だけでは達成困難であること、国内外の債券や株式に分散投資することで目標の資産形成が出来ることを体験してもらうことを大切にしています。また中級・上級クラスではリバランスとリアロケーションの重要性を説明し、これも自己の運用実績をもとに試算し、体験することを通じて、最終的には『自己の資産運用に対する判断基準の確立を図る』ことを目標としています。
継続投資教育には皆様も熱心に取組まれていると拝察いたしますが、具体的な事例として一端を紹介させて戴きました。

詳しい内容は企業年金相談センターにお問合せ下さい。

※アセットアロケーション(資産配分)の投資手法がノーベル賞を受賞していることをご存知でしょうか?米国の経済学博士ハリー・マーコビッツ博士が1990年に受賞しましたが、これは氏が1950年に発表した「現代投資理論」に対するものです。
米国の経済学者G・ブリンソン博士グループが資産配分の有効性を証明したことで、世に認められたものです。日本では「株はこわい」の観念が強いですが、資産配分の投資手法は科学性が高いことを追記します。                                        

(仁科 眞雄)

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