企業年金の現場から H30.12

企業型DC加入者の新たな節税メリット

 

1.確定拠出年金(DC)の加入期間を65歳まで延長に厚生労働省は60歳を超えても働き続ける人が増えている現状を考慮して、確定拠出年金の掛金を拠出できる年齢を引き上げる検討に入るとの報道がありました。
老後の支えとなる厚生年金は段階的に65歳まで受給開始年齢が引き上げられており、確定拠出年金も厚生年金と同じく65歳まで引き上げられる案になると思われます。
DCは企業型DCと個人型DC(以下iDeCo)があり、企業型DCは同じ事業所で勤め続ける場合に限って規約で定めれば65歳まで延長できることになっております。すなわち、今後検討される65歳までの引き上げは、iDeCo加入者が対象の中心となるかのように見えます。

2.65歳まで延長になった場合のメリット(iDeCo加入者)
最初に考えられるメリットは、iDeCoの基本メリットである節税面です。
iDeCoの掛金は所得控除の対象となるので、自営業や再雇用などで所得のある方はこの恩恵が5年延長されることになります。
年金資産をさらに積立てつつ、所得控除が使えるのは大きなメリットとも言えます。
運用益が非課税となることも、運用収益が出た場合ですが、これも5年延長されることも忘れてはいけません。

3.企業型DC加入者にもメリットがある
企業型DC制度のある会社を60歳未満で早期退職するケース。
このケースでは企業型DCの資産をiDeCoに移管せざるを得ず、60歳までは移管した資産を受け取ることはできません。

60歳で一時金(退職所得となります)として受け取ろうとしても、退職所得控除は退職時から60歳までの年数に40万円を掛けた金額にしかならず、せっかく積立てた年金資産にたくさん課税されてしまうことになります。

しかし、最低掛金(年間6万円)を5年間さらに積立てることにより、退職所得控除が200万円増えることになり、条件にもよりますが20万円以上の節税が見込まれます。

企業型DC制度のある会社の60歳定年退職者のケース。
退職一時金と企業型DCの積立金が退職所得控除の上限を超えている場合は、上記同様いったんiDeCoに移管して、最低掛金を5年間積み立てることにより退職所得控除を200万円増やすことができます。

このように企業型DCを考えるにあたっては、法改正を多面的かつ専門的に分析することができるコンサルタントと協働し情報を発信することによって、加入者への満足度を高めることにつながります。
(加藤 啓之)

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