企業年金の現場から H30.11

NISA・つみたてNISA vs iDeCo(イデコ)vs 選択制DC(確定拠出年金)

 

 1994年の公的年金制度の改正により、それまで60歳から支給されていた老齢厚生年金は、2001年度から段階的に65歳に引き上げ、経過措置として60歳から64歳までは報酬比例部分相当の老齢厚生年金が支給されるようになりました。

しかし、1961年4月2日以降に生まれた男性は、65歳になるまで厚生年金は一切支給されません。(女性は1966年4月2日以降生まれ)また、現在の厚生年金の給付水準は現役世代の60%程度ですが、将来的には50%程度に引き下げられる見込みであり、公的年金だけに頼らない「自助努力」はますます重要になっています。

 「自助努力」には、退職一時金や企業年金も含まれますが、手厚い支給の大企業に比べ、「無い袖は振れない」小規模の企業では「個人の自助努力」に頼らざるを得ないケースも考えられます。

 そこで十分な資金援助をすることは難しいが、従業員の老後を守りたい小規模企業が取り組める方法について考えてみましょう。

 

■職場積立NISA・職場つみたてNISA

 2014年に導入されたNISAは、年間の投資上限額が120万円、非課税運用期間は5年間。2018年に始まったつみたてNISAはそれぞれ40万円と20年間。提供される商品に若干の違いはあるものの、投資信託等で運用し、運用益に課税されないのが大きな特徴です。(通常は20.315%の課税)

→例えば、100万円を運用して10万円の利益があった場合、通常は2万円課税されて手元には8万円しか残りませんが、NISA、つみたてNISAは10万円そのままが運用益になります。

 職場積立NISA・職場つみたてNISAは、職場単位で導入して、身近な場を通じてNISAやつみたてNISAの加入を促進し、資産の形成を図ろうとするものです。職場で選定した取扱業者から様々な情報提供を受けたり、従業員が互いに刺激しあったりして、投資に対する理解が深まることが期待できます。拠出は給与天引きでも個人の口座からの引き落としでもできます。

 

■iDeCo(イデコ)への中小企業主掛金納付制度

 iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金(DC)の愛称で、NISA、つみたてNISAと同様に運用益は非課税となり、拠出限度額は年間27.6万円です。

 iDeCo(イデコ)の大きな特徴は、拠出額全額が所得控除になり、税制面で非常に優遇されている事です。(NISA、つみたてNISAには所得控除はありません)

 一方で、NISA,つみたてNISAにはない、加入の費用が発生することに留意する必要があります。ネット証券なら低額ですが、対面で相談が出来る金融機関は高めとなり、平均で年間4千円〜5千円程度が必要ですので、拠出額が少ない場合は税制メリットが十分に生かせない可能性があります。

 2018年5月から、従業員100人以下の企業に限り、従業員個人のiDeCoの口座に、企業も拠出出来るようになりました。老後の備えは、原則として従業員個人の自助努力に頼るにしても、企業としても少しは応援したい場合に、とても使いやすい仕組みで、拠出した掛金は全額損金計上できます。ただし、拠出限度額は従業員個人の拠出と併せて、年間27.6万円までです。

→例えば毎月の個人の拠出額1万円に加えて企業も1万円拠出し、年間24万円を運用するケース等が考えられますが、この制度の場合、従業員の掛金の拠出は個人の口座引落としではなく、給与天引きにしなければならず、毎年の確認書類の提出が必要になる等、一定の事務量が発生します。

 

■選択制DC(確定拠出年金)

 メルマガの9月上旬号でもご案内した選択制DCについて再度ご説明します。この仕組みは個人型DCであるiDeCoではなく、企業型DCを活用するものです。

例えば、ある従業員の30万円の給与を「給与:27万円」「ライフプラン手当(仮称):3万円」の様に2つに切り分けます。従業員はこの3万円をこれまで通りに給与として受け取るか、全額あるいは一部を確定拠出年金の掛金として拠出するかを自由に「選択」します。

 拠出した掛金は給与に含まれませんので、従業員の社会保険料・所得税・住民税が減少します。また、企業が負担する社会保険料も同様に削減されることになります。ただし、厚生年金の掛金が減少した場合、将来受領する厚生年金の受領額も減少する事に留意する必要があります。

 →給与が40万円(ボーナスは無しとする)の従業員が、毎月2万円の拠出を20年間続け、厚生年金を20年間受取るケースを考えてみます。

   社会保険料・税の削減額は20年間で約150万円となりますが、一方で老後に受取る厚生年金の受領額は、20年間で約53万円減少します。

また、2%で運用できたと仮定した場合の非課税効果は約24万円となるので、すべてを合わせると120万円以上の効果が期待できます

 年間で4千円〜5千円程度のiDeCoの費用は従業員個人が負担しますが、選択制DCは企業が導入するので、企業側が負担する事になります。前述の「中小企業主掛金納付制度」の拠出限度額が年間27.6万円なのに比べ、66万円まで増加するので、従業員の老後の資産形成への寄与は大きくなります。(他の企業年金制度があれば33万円まで)

「総合型」と呼ばれる企業型DCは小規模の企業でも加入でき、導入も容易です。

従業員と自社の為に、一度検討してはいかがでしょうか。

(田中 均)

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