企業年金の現場から H30.8月分

確定拠出年金制度(DC)の運用改善:指定運用方法について

確定拠出年金制度では、加入者自身が運用商品を選択・運用指図する事が基本です。何らかの理由により運用商品の選択を行わなかった場合には、自動
的に企業年金規約に定める「あらかじめ定めた運用の方法」により運用商品を選択したものとする対応がなされていました。

 上記のような取り扱いが、今回の法改正により「指定運用方法」(デフォルト商品)として確定拠出年金法に明記され、平成30年月5月1日から施行
されました(指定運用方法の規約への設定は任意です)。
「指定運用方法」とは、加入者自身が掛金の配分指定(運用商品の選択)を行わない場合に、加入者の運用権を保護し、自ら運用指図行うことを促す観点
から特定期間や猶予期間といった一定期間を設け、それでも配分指定を行わない場合にはあらかじめ定められた運用方法で運用指図をしたとみなすことです。

指定運用方法の概要
 ①指定運用方法は運営管理機関が事業主に提示し、労使が協議の上設定します(設定の場合は年金規約の変更が必要です)。
 ②設定した指定運用方法は事業主と運営管理機関が、加入者に対して加入時に指定運用方法の内容を周知します。
 ③指定運用方法の基準(運用商品)は、長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのもの

  として法令で定める基準に適合することが必要です(運用商品は各規約毎に異なります)。
 ④加入者が運用商品の選択を行わない場合は、特定期間経過後(3ヵ月以上規約で定める期間)に記録関連運営管理機関が加入者に商品選択を行う

  ように通知します。
 ⑤通知してもなお商品選択を行わず猶予期間(2週間以上で規約で定める期間)を経過した場合には、指定運用方法による運用開始となります。
  ※④特定期間中と⑤猶予期間中の掛金は「未指図資産」といいます。
 ⑥指定運用方法が適用される適用者は、改正法施行日後の新規加入者が対象者になります。
 ⑦法改正前、運用商品の選択を行わなかった加入者は,引続き「あらかじめ定めた運用の方法」により定められた運用商品を選択した取り扱いとなり
  ます。

尚、今回の法改正「指定運用方法」を規約に設定しない企業年金の場合、法改正後の新規加入者が運用商品の選択を行わない毎月の掛金は「未指図
資産」となり、加入者が運用商品の選択を行う迄現金のまま保管されますのでご注意下さい(加入者への通知は記録関連運営管理機関からはありま
せん。事業主の加入者への周知がとても重要です)。
 
 最後に、私がこれまでDC導入のお手伝いをさせて頂きました一部の企業は、毎年継続教育を実施していることを事由に指定運用方法を設定しません
でした。法改正後の新規加入者が運用商品の選択を行わない限り、毎月の掛金は「未指図資産」となり現金で保管され、将来の実質的な購買力を確保
出来なくなる可能性があります。
この状況は、DC制度導入の主旨に合いませんので、その対策として継続教育内容と継続教育実施時期等を下記の様に見直しました。
①継続教育開催時期を春から夏に変更(7月又は8月・掛金変更と新入社員が業務に慣れる時期を選択)、②DC規約の概要(加入者に知って
おいて欲しい事項を整理記載)を作成し継続教育時に配布説明、 ③継続教育配布資料を社内イントラネットに掲載しDC制度環境を整備(加入者
がいつでも復習可能な環境を用意)、④DC事務局担当者が運営管理機関の資産状況表の「未指図資産」残高を確認し、加入者の運用商品選択を支援する等です。   

(高橋 廣)

                                                            

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