企業年金の現場から H30.4

企業型確定拠出年金(DC)の運営管理機関の見直し(その2)

1.「継続投資教育」の内容に関する注目すべき新設事項
本年1月11日に厚生労働省より「継続投資教育」の内容に関する通知があり、資産運用の基礎知識に項目で新設された事項があります。

(下記インフレリスクです)
・リスクの種類と内容(金利リスク、為替リスク、信用リスク、価格変動リスク、インフレリスク(将来の実質的な購買力を確保できない可能性)等)。

2.将来の実質的な購買力を確保できない可能性とは
改正DC法において、指定運用方法とは、「長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない」(第23条の2)と規定されています。
これを受けて昨年開かれた社会保障審議会の「確定拠出年金の運用に関わる専門員会」で、「指定運用方法」の基準が議論されました。
諸々の事情を加味すると、この基準に適合する運用方法は、ターゲットイヤー型バランスファンド・リスクコントロール型バランスファンド・物価変動国債ファンドが想定でき、具体的な基準が政省令に盛り込まれるものと期待されました。しかしながら、政省令では具体的な基準が盛り込まれず、元本確保型商品を排除する内容にすらなっておりません。
現状のように、インフレ率が元本確保型の運用方法を上回っている状態では、将来の実質的な購買力は確保できません。

単純に解説すると、100万円を元本確保型運用方法で運用しても1年後には100円程度利息しかつかず、2%のインフレ率とすると現在の100万円のモノ・サービスは1年後に102万円となり購入することができません。

3.運営管理機関に委託した「継続投資教育」では、新設事項を説明できない
企業型DCのデフォルト商品の95%が元本確保型商品です。運営管理機関自ら選定している元本確保型商品でこのまま運用していたら、将来の実質的な購買力が確保できないと「継続投資教育」の場で説明できるはずがありません。

努力義務となった「継続投資教育」は、中立的で確定拠出年金の専門的知識を持つコンサルタントに委託しないと、加入者の過半数以上が将来の実質的な購買力を確保できない可能性が高まってしまいます。

(加藤 啓之)

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