企業年金の現場から H30.1

企業型確定拠出年金(DC)の運営管理機関の見直し(その2)

 

 A社は従業員80名の機械部品メーカーです。A社から、積立不足の発生を抑制するためにDBの一部をDCに移行したいとの相談があり、現状診断を実施しました。現状診断では、現在の退職金制度や人員構成などの現状分析、制度の特徴や問題点などを報告し、その中でDBの事務手数料が割高であることも指摘しました。

A社はもともと、退職金制度として退職一時金制度と税制適格退職年金(適年)制度を採用していました。平成24年3月の適年廃止に伴い、DBに移行した経緯があります。幹事金融機関は適年の幹事であった甲信託銀行のままとしていました。
  A社の総務部長から、社長をまじえて検討したいとの要望があり応諾しました。種々検討した結果、社長から「甲信託銀行とはDBのみの付き合いであり幹事を交代しても支障はない」との発言があり、総務部長を責任者として検討を進めることとなりました。その結果、DCに移行する前にDBの幹事交代を先行させることになり、A社と相談し乙生保に幹事を依頼することになりました。
 甲信託銀行に限らず、少人数の企業にとっては、信託銀行の事務手数料が生保より割高となるのには理由があります。信託銀行は幹事を受託すると、そのDB制度ごとにシステムを構築します。一方、生保は汎用のシステムを構築しており、DB制度をそのシステムにのせていくことになります。従って、信託銀行が受託しているDB制度が生保のシステムにのせられるかどうか検討する必要があります。
 A社の場合は、大きな修正をしないでも乙生保のシステムにのることが判明し、幹事金融機関の交代を検討していくことになりました。A社は従業員数が500名未満のため、掛金計算などを簡便にした簡易基準が使えるため、特に低額な手数料となります。実際どのくらいの差になるかというと、甲信託銀行が年400万円、乙生保が年210万円とほぼ半額となりました。これにA社社長も納得し、幹事交代することを決定しました。
 A社の事例を通して、退職金制度や企業年金制度の設計も大切ですが、DBやDCの事務手数料を適切なものとすることも、制度を継続的なものとするためには重要なことだと改めて実感しました。
 DCへの移行については、次回お送りします。

(葉山 俊夫) 

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