企業年金の現場から R2.7

リスクとの付き合い方

 確定拠出年金(DC)の継続投資教育の講師を務めていて、リスクを理解し上手に付き合っていくことが大切だと日々感じています。

 まず、リスクについて簡単に説明します。リスクは日常生活においては、「自動車事故にあうリスクがある」とか「冬山登山はリスクが高い」といったように、危険という意味でつかわれることが多いと思います。しかし、投資の世界では「期待リターンからのブレ・ブレ幅」という意味でつかわれます。期待リターンとは平均リターンとほぼ同じと考えてください。

 例えば、投資信託Aの期待リターンが10%、リスク(標準偏差)が15%とすると、投資信託Aのリターンは5%(10%-15%)から25%(10%+15%)の間に約7割の確率で散らばるということになります。

では、リスクに対処するにはどうしたらよいでしょうか。次の2通りが考えられます。

 

1.「君子危うきに近寄らず」という方法

    リスクがある投資信託には投資せず、元本確保型商品のみに投資する方法。

元本確保型商品は、リスクは0ではありませんが、小さくなります。投資教育をしていると、こういう人が散見されます。全てを否定するつもりはありませんが、お薦めはできません。

2.「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という方法

    元本確保型商品のみに投資すれば、確かにリスクは小さくなりますが、その代わり大きなリターンは期待できません。ある程度のリスクをとってリターンを確保する必要があります。リターンを確保しながら、リスクを抑えるのがリスクとうまく付き合う方法です。

 

リスクを抑えるためには、次の三つの方法をとること大切です。

 (1)分散投資

    値動きが異なる資産を組み合わせて投資することで、リスクを低減させることができます。債券と株式を組み合わせる、国内株式と外国株式を組み合わせるといった方法です。国内債券型、国内株式型、外国債券型、外国株式型の4種類の投資信託に元本確保型商品を組み合わせる方法が基本です。これに不動産投資信託を組み合わせる方法も考えられます。

 (2)ドル・コスト平均法(時間分散)

    時間を分散させる投資方法の一種で、一定間隔で一定額の商品に継続的に投資する方法です。商品が高いときは少量しか買えず、商品が安いときは多量に買えますので、平均単価を低く抑えることができる可能性が高くなります。DCの投資では、自動的にドル・コスト平均法となっています。

 (3)長期投資

    長期に投資すれば、リターンは複利効果(利益にさらに利益が上乗せされる効果)で押し上げられ、リスクは時間分散の効果で抑えられます。短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で投資することが大切となります。もし、値動きが大きすぎると感じられたら、元本確保型の割合を増やすなど、資産の組み合わせ割合の見直しをしましょう。

 

この三つの方法を実践していくことが、DC投資の第一歩だと思います。リターンの目標をどの程度にするか、大きなリターンを目指すか、中程度のリターンを目指すかなどは、自身のライフプランを考えながら検討する必要がありますので、次のステップと考えてください。

                                        文責:葉山 俊夫

 

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