企業年金の現場から R2.5
全企業が従業員のiDeCo加入への事務対応をしなければいけなくなる?
昨年の夏から社会保障審議会の企業年金・個人年金部会が急ピッチで開催され、12月に議論の整理が参考資料として公表されました。
企業年金の見直し点は6項目ありますが、「企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和」について説明します。
iDeCoの愛称は2016年に生まれ、2017年1月から国民年金3号被保険者や公務員を含む全国民が加入できるようになりました。加入者は2019年3月末で121万人に増加しましたが、より普及が進むべく制度整備をするものです。
1.企業型DC加入者のiDeCo加入を認めている事業主は2019年3月末で約4%
2.企業型DC加入者は規約の定めと事業主掛金の上限額の引下げ(月額55,000円から35,000円に)をしないとiDeCoに加入できない
3.一方、確定給付型企業年金(DB)のみ加入の企業の場合は、規約の定めなしでiDeCoに加入できる等の課題があり、今回の改正(案)は規約の定めや事業主掛金上限額の引下げがなくても、全体の拠出限度額(55,000円)から事業主掛金を控除した金額でiDeCoに加入できるように改善を図るものです。また、事業主掛金を管理する企業型DCの記録関連運営管理機関とiDeCoの掛金を管理する国民年金基金連合会との情報提携で対応することも織り込まれました。企業型DC加入者向けのウェブサイトからiDeCo掛金の拠出可能額や積立残高の確認ができるようになると思われます。
・企業型DCの事業主掛金の上限額は月額35,000円、従業員のiDeCo掛金の上限額は月額20,000円です。
・確定給付型を併せて実施する企業の企業型DCの上限額は15,500円、従業員のiDeCo月額上限額は12,000円です。確定給付型のみ実施する企業の従業員のiDeCo月額上限額も12,000円です。
※企業年金が何も導入されていない中小企業等の従業員のiDeCo掛金の月額上限額は23,000円で変りありません。
改正案が施行されると企業型DCの導入の有無にかかわらず、すべての企業がiDeCoへの事務対応をしなければならなくなります。既に企業型DCでマッチング拠出を実施している企業も従業員の要望があれば対応しなければいけなくなります。
iDeCo加入の事務負担は意外と大きいと思われますのでご留意ください。
iDeCo導入に関する企業の事務手続きは当ホームページ「よくある質問」新バージョン〜確定拠出年金制度のQ21をご参照ください。
人生100年時代といわれ、公的年金の給付減額や就業形態の多様化等、老後対策が重要となる中で、企業のDC制度への対応の重要性が増していると思われます。
文責:仁科 眞雄