企業年金の現場から R2.3

誰でもiDeCo(個人型DC)加入の衝撃

2016年DC法改正の欠陥

 2016年の法改正によりiDeCoの加入可能範囲が拡大されましたが、企業型DC加入者のうちiDeCo(月額 2.0 万円以内)に加入できるのは、拠出限度額(DC全体で月額5.5万円以内)の管理を簡便に行うため、現行はiDeCoの加入を認める労使合意に基づく規約の定めがあって事業主掛金の上限を月額5.5 万円から3.5 万円に引き下げた企業の従業員に限られていたとは言え、大きな制度緩和でした。

 しかしながら、この制度緩和は下記2つの大きな欠陥があったため、ほとんど活用されず、結果としてiDeCoの加入者の伸び悩みとなりました。

①事業主掛金が3.5万円を超えている従業員が一部いること等により、当該従業員 の不利益となるため掛金の上限の引下げが事実上不可能。

②事業主掛金とiDeCo掛金の合算管理を加入者個人別にする仕組みが必要であり、 事業主掛金を管理する企業型記録関連運営管理機関(RK)がシステム負担をして までするはずがなく、iDeCo 掛金を管理する国民年金基金連合会(国基連)もその組織の脆弱性から合算管理は不可能。

 

RKと国基連の連携

 昨年に何度か開催された厚生労働省の社会保障審議会個人年金部会において、上記②の個人別掛金の合算管理を、国基連が多額の借入を行いRKと連携してシステム開発を始め、RKの加入者向けのウェブサイトで合算管理ができるように進めていることが明らかになりました。

 もちろん、掛金拠出の年単位化をしている加入者との矛盾も残っていますが、そもそも年単位化実施規約は0.2%とほとんど活用されていません。

 

iDeCo加入者の飛躍的増加

 iDeCoの加入者は、2019年11月末現在で約144万人と増えてはおりますが、当初の見込みからは遠くかけ離れております。2016年の法改正で新たに加入できるようになった公務員や専業主婦の新規加入者は頭打ちになった感があります。

 しかしながら、前記のように事業主掛金とiDeCo掛金の合算管理が可能になることから、現在約700万人いる企業型DC加入者が iDeCoにも加入することが見込まれます。企業型DC加入者の若年層は事業主掛金が数千円とセカンドライフへの準備としては不足であり、なおかつDC制度の税制優遇を理解している加入者は積極的にiDeCoに加入することが期待できます。

 まだまだ、マッチング拠出や年金規約変更など解決しなければいけない課題も残されていますが、個人年金部会の議論では、「誰でもiDeCo加入」を進める見通しであり、2-3年後にはiDeCo加入者の飛躍的増加が期待できると思われます。

 

 今後は、すでに企業型DCを導入している事業主も加入者のニーズに沿うように、DC制度の見直しをすることが望まれます。

 

 文責:加藤 啓之