企業年金の現場から R4.7

選択制確定拠出年金(選択制DC)を導入する企業が増えています。

最近導入する企業が増えている選択制DCは、給与などの一部について、企業型DCの掛金として拠出するか、これまで通り給与として受け取るか、従業員が自らの意志で選択することができる確定拠出年金制度です。

 

企業にとっては、新たな掛金負担なく企業年金制度を導入することができるのが大きな魅力です。企業は、労使合意に基づいて、現行の給与の一定額を従業員が確定拠出年金に拠出することが可能な手当を導入します。(ライフプラン手当と仮称します)

 

ライフプラン手当は、原則として確定拠出年金法で定められている月の拠出限度額となるため、現時点では、55,000円以下となります。仮にライフプラン手当を30,000円とした場合、従業員は、ライフプラン手当30,000円のうち、1,000円単位で拠出することができます。拠出金の額も従業員自身のライフスタイルの変化に対応し、増額や減額することができます。また、拠出時、運用時、受取時に税制優遇措置が図られています。従業員は所得控除になります。選択制DCの拠出金は、社会保険料等の対象外のため、従業員と企業ともに社会保険料等自己負担額の軽減を図ることもできます。社会保険料軽減のメリットは、選択制DCのみ受けることができるメリットです。

 

選択制DCでは、転職または退職などにより、その企業の選択制DCから脱退する場合、積立てた資産額を他の企業年金やiDeCo等に持ち運んで運用を続けることができます。

 

選択制DCの企業メリットをまとめると以下のとおりとなります。

・企業の掛金負担なしで、新しい退職金制度を導入できる

・給与が減少するので、企業の社会保険料負担が軽減できる

・企業年金制度を有する企業として求人、従業員の定着化に寄与できる

・大きな費用負担なく福利厚生を充実させることができる

 

選択制DCの従業員メリットをまとめると以下のとおりとなります。

・運用益に所得税や住民税がかからないので、効率的に老後資金が準備できる

・給与を掛金に振替えた分、所得税・住民税に加え、社会保険料も軽減できる

・年金や一時金には、公的年金等控除や退職所得控除など税制上の優遇措置が適用される

・自身の資産額を常にWEBで確認することができる

 

一方、導入する際に考慮すべき点も多々あります。

・選択制DCの運営管理機関選定をその商品や運営費用を考慮して決定する

・原則として60歳までは資産の引き出しができないので、従業員への周知徹底を図る

・従業員に対して資産運用に関する投資教育を行う

 

当企業年金相談センターは選択制DCの導入、運営管理機関選定のアドバイス、従業員に対する制度の周知徹底と投資教育などにもお応えできますので、ぜひご相談ください。

 

文責:田邊 勝彦

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