企業年金の現場から H28.10

コンペのすすめ

 

 

・マイナス金利で一段と高まる手数料

 

 かねてから銀行の利ザヤ収益は低下してきましたが、日銀のマイナス金利政策で貸出や債券運用の収益力は一段と縮小します。これを補完すべく、銀行が収受する様々な手数料が引き上げ圧力にさらされるのは避けがたいことでしょう。確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)の手数料もその例外ではないとみておくべきです。そうした銀行の動きは、当然生損保の手数料水準にも上向きの影響を与えます。

 

・会社負担の手数料と従業員負担の手数料

とりわけDCの場合、会社が払う運営及び資産管理手数料のほかに、各種投資信託について「信託報酬」と称してその商品を選んで運用する従業員の負担になる手数料があることに注目しなければなりません。その運用商品が2.0%の利回りを上げたとしても、信託報酬が1.2%ですと、実質0.8%の運用にしかなりません。

 

  これでは企業年金のせっかくの非課税メリットも吹っ飛んでしまいます。ですから、運営管理機関の選定を行うにあたって、コンペを行うことによって、とりわけ信託報酬の低い金融機関を選ぶことが必要になります。 

このたびのDC改正法には、運営管理機関の見直しの努力の義務化も盛り込まれています。

 

・「パッシブ・ファンド」と「アクティブ・ファンド」

  運営管理機関が提案してくるファンドには、日経平均とかMSCI(モルガン・スタンレー・キャピ

タル・インデックス)のような内外の証券の利回りの平均的な指数にリンクして基準価格が決まる「パッシブ・ファンド」と、「日本成長株ファンド」とか「世界ロボット産業株ファンド」とかと、特定の地域や産業分野の企業を限って平均以上の利益を狙い求める「アクティブ・ファンド」とがあります。

 

  当然、情報調査の必要な後者の方が信託報酬は高いのです。しかし、アメリカでの調査では、「アクティブ・ファンド」の成果が長期にわたって「パッシブ・ファンド」のそれを上回ったことはほとんどないと報告されています。

 

  ですから、コンペに当たっては、「パッシブ・ファンド」に力点をおいている金融機関を

より高く評価すべきでしょう。

 

・金融機関との関係の調整

 

  当法人はこうしたコンペの実務をお手伝いしてきましたが、コンペを行うことで信託報酬や手数料のかなり大幅な引き下げ効果を出せることは事実です。ただ、そうはいってもメインバンクや大株主の金融機関との取引関係もこれあり、まったくの競争関係で決めるわけにもゆかないという話もよく聞きます。

 

  しかし、現実には、こういう特別な取引関係があっても、コンペは有効に働きます。競争原理をとり入れてコンペを行うことで、メイン・バンク等関係先との交渉力もつき、費用削減の要望を受け入れてもらった事例も数多くあります。

 

「企業年金の現場から」に戻る