企業年金の現場から H27.05

確定拠出年金(DC)制度の改正について

 

 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案が、平成27年4月3日に国会に提出されました。この改正の概要について、解説します。

 確定拠出年金(以下DC)は、公的年金に上乗せされる選択肢として、平成13年10月に開始されました。企業型DCは、平成27年1月末時点で、19千社以上に導入され、加入者は5百万人を超えています。一方、個人型の加入者は、20万人を上回った程度で、余り浸透していません。

 急速に解散が進む厚生年金基金の受け皿として、企業型DCの使い勝手は、さらに改善されることが望まれています。また、個人型DCについては、普及の促進が必要で、今回の法改正は、これらに寄与するものと期待されます。

 

概要

 1.個人型DCの加入対象者の拡大

   企業年金加入者、公務員、第3号被保険者(専業主婦)が、新たに加入できるようになります。拠出限度額は、それぞれ以下の通りです。

  (ア) 企業型DC加入者(他の企業年金無し) 年額:24  万円

  (イ) 企業型DC加入者(他の企業年金あり) 年額:14.4万円

  (ウ) 確定給付型年金のみ及び公務員等共済加入者 年額:14.4万円

  (エ) 第3号被保険者(専業主婦) 年額:27.6万円

   ※企業型DCの加入者が、個人型DCに加入するには、企業型DC規約にその旨定められていることが必要です。

   また、企業型DCの拠出限度額は、個人型DCの拠出限度額相当分が、減額されることになります。

 

 2.個人型DCへの小規模事業主の掛金拠出

   企業年金の実施が困難な小規模事業主(従業員100人以下)が、個人型DC加入者に対し、追加拠出が出来るようになります。この拠出額は、事業主の損金算入が可能で、従業員の給与所得には、含まれません。

 

 3.ポータビリティーの拡充

   これまでは、企業型DCからDB(確定給付企業年金)への資産移管は認められていませんでしたが、これが可能になります。さらに、中小企業退職金共済制度(中退共)から企業型DCへの資産移管も出来るようになります。

 

 4.簡易型DCの創設

   従業員100人以下の企業を対象に、設立時の書類を簡素化し、行政手続きを金融機関に委託できる、簡易型DCが創設されます。

 

 5.その他

  (ア) DCの拠出限度額が、月単位から年単位に変更され、賞与で一括拠出することも可能になります。

  (イ) 継続投資教育が、配慮義務から努力義務に変更されます。

  (ウ) 運用商品の除外が、商品選択者全員の同意から、3分の2以上の同意に条件が緩和され、商品の入れ替えが容易になります。

  (エ) 運用商品の提供義務については、「リスク・リターン特性の異なる3つ以上の運用商品」に変更され、元本確保型商品については、提供義務から、労使の合意に基づく提供に変更されます。提供される商品数も、抑制される予定です。

 

  ※なお、上記の1.及び5.(ア)については、平成29年1月1日から、それ以外の項目に関しては、公布の日から2年以内で政令で定める日から施行される予定です。

(田中 均)

 

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