企業年金の現場から H27.03

代行返上方針に不安はないか?

 

 厚生年金基金(以下基金と言います)は平成9年の1874基金をヒークに減少し続け、昨年末には483基金を残すのみとなりました。その主な理由は単独型・連合型基金の多くが代行返上して確定給付企業年金制度に、或いは解散して確定拠出年金制度に移行したためです。総合型基金は加算部分が薄いため代行返上は困難との認識が一般的で、総合型基金だけが取り残されてしまったと言っても過言ではありません。長期にわたる不況の中で、基金は代行部分が大きな重荷となって体力を消耗し続けてきました。そして今、年金資産が代行部分以下となってしまった基金が続発しています。

 

 政府はこれを看過するわけにはいかず、基金が解散しやすく、また、代行返上しやすく(実際には代行返上はしにくい)、そして存続しにくいように厚生年金保険法を改正し、昨年4月に施行しました。この結果、昨年末には、全483基金のうち290基金が解散方針を、87基金が代行返上方針を決め厚労省の内諾を得ています。方針未定又は存続基金はわずか106基金となりました。

 

 さて、問題はとりあえず代行返上方針を決めた基金です。基金は毎年3月末日を基準日として①基金が継続していくための年金資産を保有しているか、②基金が基準日に解散したとした場合に分配すべき年金資産を保有しているかを検証(財政検証)しています。基準に満たない場合は掛金の引上げや給付の減額などを検討し対応をしなければなりません。しかし、改正法の下では、解散又は代行返上方針決議を決めて厚労省の内諾を得た基金については、上記基準に拘らず基金自らが策定する解散計画又は代行返上計画に示した財政運営(計画策定時点で確定している決算時における積立水準が下がらない計画運営)をすればよいこととされました。そのため、多くの総合型基金は解散計画を、或いは、とりあえず代行返上計画を策定し、従来の財政基準の適用を免れています。

 

 代行返上方針を決めるには3分の2以上の事業主の同意で足りますが、本当に代行返上するのであれば全事業主の同意が必要となります。そのため、代行返上する基金は権利義務の移転や基金分割解散或いは事業所脱退を促すなどの手法で同意しない事業主を排除することはできますが、現実には難しい。元々代行返上は加算部分が手厚い単独型基金や連合型基金の代行リスク回避のための手立てであり、資産が少なく過重な負債を背負った総合型基金には適しません。そのため、代行返上方針を決めた87基金のうち事業主の同意が得られず解散に向けて方向転換した基金も出始めています。この流れは続くと思われます。

(近藤嘉正)

 

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