その他(年金制度一般)

Q1.公的年金の給付減額はどのくらいなのでしょうか(2018年10月)

A1.年金の財政計算は5年ごとに実施され、最新は平成26年度(2014年度)です。そこで「2014年度から30年目の2043年度に20%減額する」という国の方針が明確にされました。36年目の2050年も20%減額のままです、
つまり給付減額は30年かけて徐々に実施し以降は横ばいにするという計画です。国は金額ではなく「所得代替率」という指標を使って方針を示しています。「所得代替率」は現役世帯の所得に対する夫婦が貰う年金額の比率です。2014年度は62.7%ですが、2043年度には約50%にするという計画ですから、約20%の減額されることになります。経済成長や人口の動向で8通りの試算をしています。最悪では所得代替率が40%になるケースもありますが、その場合も所得代替率は50%の給付水準を維持するよう、給付と負担の在り方について検討するとしています。
この方針を現在の金額ベースで捉えてみましょう。2014年度の年金モデル(40年勤務、妻は専業主婦)は夫婦2人で月約21.5万円ですから、20%減るということは4.5万円減り月額約17.8万円になります。計画通りに行けば2014年度に35歳だった人が30年後65歳で年金を貰い始める時に受取る年金月額は約18万円だということになります。
また、すでに年金を受給している人は対象外かというとそんなことはありません、貰う金額が年々減額されます。30年で20%減ると言うことは年率約0.7%の減少、月々の減少金額は約1500円です。
僅かな金額ですが、塵も積もれば山となる〜30年後には現在の貨幣価値ベースで月額4.5万円も減り、約18万円になると考えて下さい。
老後の生活水準を親世代並みに維持したいとすると、月額4.5万円の年金を自分で創る必要があります。
人生100年時代、65歳以降35年生きるとすると1890万円の老後資金準備を増やさないといけない計算になります。
現在、一般的に老後資金の準備は3000万円必要と言われていますが、それでは足りず約5000万円の準備が必要になりそうです。

Q2.福利厚生の一貫でライフプラン教育を実施したいと考えますが、どんなやり方が良いですか(2018年10月)
A2.人生の三大資金は住宅資金・教育資金・老後資金ですが、企業が導入するライフプラン教育は老後資金に関する内容が多いと思われます。リタイアメントプランと言われるものです。
公的機関では従業員の不祥事防止には生活や金銭教育が重要と考えて20歳代からライフプラン教育に取組ませるところもありますが、一般企業では50歳代の社員に向けたライフプラン教育の実施が一般的だと思われます。
大会社や上場企業等では数十年前から実施されていますが、中堅中小企業でも実践がすすんでいます。
福利厚生を提供する会社やファイナンシャル・プランナーの諸団体が引受けてくれますが、当NPO法人(略称:企業年金相談センター)でもお引受しますので、お問合せ下さい。

 

Q3.企業年金にはどんな制度がありますか
A3.企業年金制度は主として、確定給付企業年金と確定拠出年金の二つの制度があります。以前これらの制度の他に、適格退職年金と厚生年金基金がありましたが、適格退職年金は2012年3月末に廃止になり、厚生年金基金は2014年4月から原則廃止に向かって移行中(代行返上・解散)であり新設は認められません。

Q4.企業年金制度に類似した外部積立制度はありますか
A4.企業年金制度とよく似た外部積立ができる制度に、中小企業退職金共済(中退共)と特定退職金共済(特退共)がありますが、これらの制度は退職金の外部積立として利用されています。

Q5.企業年金加入の主なメリットを簡単に説明して下さい
A5.主として次のようなメリットがあります。
①税効果:拠出時の非課税、運用時の非課税(特別法人税凍結中)、年金受給時の公的年金等控除の適用
②資金負担の平準化:企業年金は、事前の分割払いのためキャッシュアウトの平準化が可能
③受給権の保護:企業年金で社外に積み立てた資産は受給権者に帰属

 

Q6.企業年金は一時金で受給できますか

A6.企業年金制度は、年金で受給することも一時金で受給することもできるように設計されているのが一般的です。

 

Q7. 公的年金の繰上げ受給・繰下げ受給とはどういうことですか

A7.公的年金の受給開始年齢は65歳が基本ですが、60歳から70歳の間で繰上げ又は繰下げを任意に選択することが出来ます。今後は、75歳まで繰下げられるようになる見込みです。
「受給開始年齢を繰上げる」と受給額は1カ月につき0.5%減少します。60歳まで繰上げた場合は、本来受給できる額の70%に低下し、72歳以降は、生涯に受取れる年金の総額が減少します。また、受給開始後に障害が起こった場合には、障害年金を受け取ることは出来なくなるので、あまりお勧めできません。
また、老齢基礎年金(1階部分)と老齢厚生年金(2階部分)はセットで同時に繰上げなければならず、一方だけを繰上げることは出来ません。

「受給開始年齢を繰下げる」と受給額は1カ月につき0.7%増加します。70歳まで繰下げた場合は本来受給できる額の142%に増加し、82歳以降は生涯に受取る年金の総額が増えます。
留意点は、①税金や社会保険料が増加する可能性があります。②国民健康保険・介護保険の自己負担割合が増える可能性があります。
③加給年金を受取れない可能性があります。④遺族厚生年金は増額されません。⑤在職老齢年金の支給停止分は、増額の対象となりません。

 

Q8.通算企業年金とは何ですか? 2020年5月に国会を通過したDC法の改正内容を読んでいたら「退職に伴う企業型DCから通算企業年金への移換」

   が可能になるとされていました。「通算企業年金」とは?
          
A8:企業年金連合会が実施する企業年金の名称です。企業年金連合会は厚生労働省が認可、監督する特別法人です。
従来から、確定給付企業年金(DB)に加入していた従業員(加入員)が退職した場合、脱退一時金相当額を企業年金連合会へ移換し通算企業年金として年金化することができました。
通算企業年金は平成元年に「基本加算年金」や「代行加算年金」として制度化され、平成17年10月ポータビリティ実施に伴い「通算企業年金」として生まれ変わりました。転職を積極的に実施する人は退職金や年金を貰う意識も低く、次なる活動へまい進してゆく傾向が強いのではないでしょうか。

こういうタイプの人への公平性、老後を守るためには「通算できる制度」が必要不可欠なのだと考えられます。
今回の法改正で企業型DCにも「通算企業年金」への資産移換ができるようになることは意義あることだと思われます。
尚、通算企業年金は終身年金で、80歳まで保証期間がありますが、年金に代えて一時金でもらうこともできます。詳細は「通算企業年金」でネットを検索して下さい。

 

Q9:60歳を過ぎたシニア期にも雇用保険は受給できるのでしょうか?(2021年2月)

 

A9:雇用保険の基本手当(失業手当)は65歳未満が対象なので、60歳を過ぎて退職した被保険者であったシニアも要件を満たせば受け取ることができます。その際に注意したいのは公的年金との調整です。現在、65歳未満の人には「特別支給の老齢厚生年金」(20年度は男性63歳、女性61歳以上)が支給されています、これを基本手当と同時に受け取ることはできません。人によっては年金額の方が多くなることがあるので、どちらを選ぶかよく考えて多い方を選択できます。尚、老齢厚生年金は所得税課税対象ですが、

基本手当は所得税非課税です。

 

65歳以上の高年齢被保険者が退職する際には、基本手当に代わって雇用保険から「高年齢求職者給付金」という一時金が支給されます。いくら受け取れるかの計算式はほぼ基本手当と同じです。ただし、給付日数が30〜50日と少なくなるので、基本手当をフルに受給した場合などと比べると金額は大きく減ります。こちらの給付金は老齢厚生年金と併給して受け取ることができます。

 

 

65歳を境に変わるこの給付を考えて退職時期を前倒しする人もいます。仮に雇用保険に20年以上加入し、月給18万円で働くシニアが退職するケースを例にとりますと、65歳を過ぎてからだと、「高年齢求職者給付金」は50日分の約25万円。一方、64歳11カ月など65歳直前で自己都合退職すると、基本手当は150日分で約71万円になります。わずかなタイミングの違いで受け取る金額に大きな差がつきます。

 

Q10.最近、企業から預かる年金保険の予定利率が大幅に引き下げられるという報道がありました。生命保険への投資はリスクが低いため多くの年金の投資先になっていると思いますが、将来受け取る年金にどんな影響がありますか。(2022年6月)

 

A10.  第一生命保険は2021年10月に確定給付企業年金の予定利率を1.25%から0.25%に引き下げ、日本生命は2023年4月に年1.25%から0.50%へと引き下げることになっています。

ここでいう予定利率というのは、保険会社が提供している運用商品の1つである一般勘定という運用商品で約束されている利率のことで、保証利率とも言います。

確定給付企業年金では、事前に一定の率で将来の運用収益を見込んで掛金を設定しています。しかし、保証利率が引き下げられても直ちに確定給付企業年金の給付額が引き下げられるわけではありませんが、企業が見込んでいた運用利回りまで運用収益を確保することは困難になります。よって、確定給付企業年金制度を持続的に運営に必要となる年金資産を将来にわたって確保することが難しくなります。第一生命は3000社、日本生命は5200社と契約しており、各社の退職給付会計に大きな影響が及ぶと考えられます。

企業側の対応として考えられるのは

(1) リスク資産を増やして予定利率の維持を目指す。(運用能力のスキルが必要)

(2) 予定利率を引き下げて、標準掛金を増額する。(企業負担増加)

預貯金、保険といった元本確保型の商品が、企業年金の相当部分を占めており、この予定利率の低下で、運用利回りは低下し、加入者が将来受け取る年金も減少する可能性があります。

したがって、今後はリスクをとってリターンの良い商品を選択する必要があります。

確定給付企業年金制度は従業員に支給する給付金額を確定しているため、これを減額することは企業の業績が相当程度悪化しない限り認められません。

 

Q11.政府が2022年12月中にも発表するという「資産所得倍増計画」によって、企業年金制度に変化はあるのでしょうか。(2022年12月)

 

A11.10月17日に総理出席のもと行われた「資産所得倍増分科会」の資料を見る限り、企業年金に関する議題は見られませんでした。個人型確定拠出年金(iDeCo)については、更なる使いやすさの追求といった方向性が見られるものの、拡充といった観点からは残念ながら日本証券業協会などの関連団体が提言しているような内容はありませんでした。

 

政府は2025年に大きく改正する予定である公的年金改革の議論に着手したばかりでもあり、「資産所得倍増計画」によって企業年金制度に変化が生じることはないように思われます。

 

Q12.国民年金保険料の納付が65歳まで延びると報道されていましたが、本当でしょうか。(2022年12月)

 

A12.社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の年金部会という会議が先月から始まり、2025年の年金制度改革に向けた議論が始まりました。少子高齢化により、満額で月約6万5000円の基礎年金は給付水準低下が見込まれ、高齢者の暮らしへの影響が懸念されています。その対策の在り方が審議会の議論の中心で、基礎年金の財源となる国民年金保険料の納付期間延長や、会社員や公務員が加入する厚生年金からの財源投入などが話し合われる見通しです。

厚労省は2024年末までに改革案をまとめ、2025年の通常国会での法改正を目指していますが、国民や企業の負担増が絡むだけに、国民年金保険料の納付が65歳までとなるかは慎重な意見も多く、まだ確定したというわけではありません。

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