企業年金の現場から H27.08

注目を集める『キャッシュ・バランス・プラン』(CB)& マイナンバー制度がやってくる~民間事業者の対応~②

注目を集める『キャッシュ・バランス・プラン』(CB)

  

キャッシュ・バランス・プラン(以下CBという)が注目を集めています。CBは平成14年より導入が認められた制度で、確定給付企業年金(以下DBという)に分類されます。大手の電機メーカーなどが導入し、一時注目を集めましたが、ここへきて、再び注目されるようになりました。

 厚生年金基金制度が原則廃止されることとなりましたが、廃止後に設立される後継制度としてCBを採用する事例が増加しているからです。なぜ、DBではなく、CBなのでしょうか。

 

 CBはDBと確定拠出年金(以下DCという)の特徴を併せ持つ、ハイブリッド型の制度です。DBは一定の計算方法により退職金額が決まります。その退職金を支払うため、企業が掛金を掛け、支払い時までその掛金を運用します。一方、DCは一定の計算方法で決まる掛金額を、企業が従業員の年金口座に拠出し、それを従業員が運用します。つまり、運用リスクをDBは企業が、DCは従業員が負うことになります。

 

 それに対しCBは、一定の計算方法できまる掛金額を従業員の仮想年金口座に拠出するところはDCに似ています。その仮想年金口座の残高に利息が付き、元利合計を従業員が受け取ります。利息を付けるのは企業の責任で行われますので、企業が運用リスクを負うことになります。ただし、DBのように一定の利率(予定利率)以上の運用ができないと積立不足が発生するのとは異なり、仮想年金口座に付利する利率

(再評価率)は国債の利回りなど一定の指標に基づき変動しますので、指標に連動するような運用をすることにより、DBよりは積立不足が発生しにくくなります。

 

 厚生年金基金が解散した後に、基金事務局が後継制度を提案する場合があります。後継制度をDBにすると厚生年金基金の二の舞いとなって、積立不足の増大に苦しめられることも考えられますので、少しでも積立不足が発生するリスクを抑えるため、CBを採用するケースが多くなってきています。

 また、平成26年からCBの給付設計の弾力化が図られ、指標として「年金資産の運用実績」が追加されました。さらに、再評価率は、従来は「単年度で0以上」とされていましたが、「退職までの通算で0以上」とされるなどより使いやすい制度になりましたので、今後はCBを採用する企業も増加すると思われます。

 

(葉山 俊夫)

 

 

マイナンバー制度がやってくる~民間事業者の対応~②

 

 10月のマイナンバーの通知まで、いよいよ2カ月と迫り、マイナンバーに関する情報が氾濫している中、「具体的に今、何をしなければならないのかわからない」、「何から始めたら良いのかわからない」と思われている企業のご担当者の皆様のお気持ちに応えるべく、弊社のセミナーでは、このような順序ではじめたらいかがでしょうか・・と次のような例示を示して、各ステップについて検討するポイント等を整理してお伝えしています。

 

 ① 情報収集(制度概要の理解など)

 ② 取扱事務の特定、取扱担当者の決定(業務別、本社・支店等)

 ③ 従業員およびその他対象者からのマイナンバー収集方法・本人確認方法の決定

 ④ 担当者および全社員への啓蒙教育、制度開始のお知らせなど

 ⑤ 取得に際しての利用目的の通知文の作成、配布、公表準備など

 ⑥ 委託先の見直し、契約書の確認

 ⑦ 安全管理措置への対応(取扱規程・マニュアルの作成含)

 

開始まで、残された時間が少ないため、これから本腰を入れて準備を始められる企業については、上述の各ステップを並行して行うこととなると思われます。

 10月以降、企業が実際に「マイナンバー」を従業員などから収集するにあたり、極めて重要なのは、まず、従業員各自にマイナンバーを確実に受け取ってもらい、そして、誤って廃棄したり、紛失しないように、保管・管理してもらうことです。すなわち、企業が従業員のマイナンバーを収集する作業は、「従業員の手元にマイナンバーがあること」が前提であるからです。したがって、通知カードが配布されることについて、しっかりと全従業員に周知し、理解してもらうことが、会社として、今後の収集作業の効率を左右すると言っても過言ではありません。

 

 マイナンバーが記載された「通知カード」は、今年10月5日時点の住民票をもとに作成され、住民票の住所に世帯単位で、簡易書留で郵送されます。現住所と住民票の記載住所が違う場合は通知カードを受け取れないので、住民票を10月5日までに移す必要があります。

 従業員の中には、住民票の住所と現住所が一致していない方もいると考えられますので、企業としては、今年の10月5日までに一致させてもらうようにお願いする等の活動が必要になると思われます。

 なお、住民票を移す際には、

 ●同一市区町村で住所変更する場合は、その市区町村に転居届を提出します。

 ●他の市区町村へ住所変更する場合(現在の住所と住民票の住所が異なる市区町村)は、住民票のある従前の住所地の市区町村に転出届を提出した上で、現在の住所地の市区町村に転入届を提出します。

 この周知活動に際し、マイナンバー制度についての全従業員向けの啓蒙教育を行うことをお勧めします。

 この教育については、内閣官房「マイナンバー 社会保障・税番号制度」のホームページに、社員研修に使用できるような様々なツールが用意されています。「フリーダウンロード資料」中に掲載されている資料は、自由にダウンロード・プリントアウトして使用可能です。

 また、動画もあり、20分程度ですので、休憩室や食堂などで視聴してもらう等の方法もあるかと思います。通常、研修となると、日程や場所を確保して、講師をどうするのか・・等と経費や時間がかかりますが、このようにツールが色々と揃っていますので、経費をかけずに自社の状況に合った方法で実施出来るのではないでしょうか。

 

 重要なのは、研修の体裁ではなく、「すべての従業員に伝えること」です。

 

(江村 かおり)

 

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